父親の影響で幼少期からバイクが身近にあった竹内さんは、高校時代にYouTubeで大阪工大の学生フォーミュラプロジェクトを知り、興味を抱きました。全日本学生フォーミュラ大会への出場と入賞を目指し、学生が一からレース用車両を設計、製作、開発する取り組みに感銘を受け、活動に参加したいと機械工学科に進学。学部時代は、ほとんどの時間をフォーミュラプロジェクトに費やしました。
プロジェクトでは、パワートレイン部門に所属し、吸気や排気など、車を動かすために不可欠なエンジン関連のパートを担当。1年の秋からは部門の統括を担い、エンジン周辺部品の軽量化と高出力化に取り組みました。翌年には部員の推薦を受けてプロジェクト全体のリーダーに就任し、部門の一員としてエンジンの設計作業を進めながら全体の統括も行い、車体の大幅な改良に成功。その結果、2021年度学生フォーミュラ日本大会の公式記録会では、2位のタイムを記録しました。
プロジェクト中心の学部時代は、とにかく忙しい日々でした。授業が午後5時に終わると、学内での活動が認められている午後10時半まで設計・製作に取り組み、帰宅後も更に設計を続ける毎日で、睡眠時間が確保できない日もありました。また作業過程で分からないことがあれば、論文から情報を集めて理解を深めました。「授業よりも先に、プロジェクトのために調べた論文から学ぶことも多かったですね」と笑います。
大学院に進学後は、「磁気を電気に変える研究」に取り組んでいます。この研究は、非接触給電(ワイヤレス給電)技術の開発や自動車の電力消費の削減につながることが期待されています。研究成果が評価され、2023年には権威ある研究誌「Journal of Materials Science」に掲載され、イギリスでの国際学会で口頭発表も行いました。英語に苦手意識があったので、想定問答の作成や発表練習など事前準備を入念に行い、本番に挑みました。想定外の質問にも対応でき、無事に発表を終えた時は、達成感を味わいました。
大阪工大での6年間は、技術的な知識だけでなく、チームワークやリーダーシップの重要性についても深く学ぶ時間となりました。春からは、本田技研工業(ホンダ)で技術者として新たな一歩を踏み出します。「将来はF1のエンジンを造りたい」と話す竹内さん。自宅にはバイクが12台あり、そのうち7台はホンダ製です。憧れの企業で夢を追い続ける強い決意がキラリ輝いています。