橋脚のコンクリートに含まれるシリカ鉱物が雨などの水分を吸収し膨張することで、ひび割れが起こるアルカリシリカ反応(ASR)。「コンクリートのガン」とも呼ばれますが、その仕組みは未解明な部分も多いのが現状です。小池さんはガンのメカニズムを解明し、合理的な耐震補強設計を提案すべく研究を進めています。きっかけは明石海峡大橋を見た時で「スケールの大きさと美しさに、自分もこんな橋梁を設計したいと思いました」。しかし、吊り橋だけでなく高速道路も含む橋梁は国内に約70万あり、その半数近くが老朽化していることを知って、設計だけでなく耐震補強にも携わりたいと思うように。そのために必要不可欠なASRについて学ぼうとコンクリート工学を専攻しました。
現在は、ASRが生じた橋脚を模した鉄筋コンクリートの試験体に負荷をかけることで、地震に対してどの程度の性能を有しているかをデータ収集しています。ひび割れはコンクリート内部にも発生し、その大きさは0.1ミリに満たないためCTスキャンし画像で確認しますが、その枚数が膨大。3000枚の画像とにらめっこする日々もあると言い「まさに苦行です」。また、想定より強い力を加えないとひび割れしないなど計画通りにはいかず「トライ&エラーというよりエラー&エラーです」と笑う小池さん。しかし、ASRの解明が、橋梁のメンテナンス方法ひいては耐震補強の合理化につながると考え、日々コンクリートに向き合っています。
現在の橋梁メンテナンスは主に目視検査と打音検査の2種類がありますが、国内の橋梁の数を考えるとあまり効率的とは言えません。また、地震大国・日本においてはより迅速な対応も求められます。更に、南海トラフ地震を想定した耐震補強も必要で、「阪神高速道路が横倒しになった阪神・淡路大震災以上の揺れが直撃したら被害は想像もつきません。こまめに行えるメンテナンス方法も確立させる必要があります」と力を込めます。
卒業後は、橋梁のメンテナンスを手掛ける企業に就職し、将来は日本の橋梁を守っていく事業に携わりたいと言う小池さん。「そのためにも今はASRの解明に注力しています」。試行錯誤を重ねながらも粘り強くコンクリートと向き合う姿勢がキラリ輝いています。