スマートフォンなどのWi-Fi 信号をキャッチし人の密集度や流れをリアルタイムに計測・予測するシステムの開発に取り組む豊味さん。災害発生時の避難誘導や感染症対策の3密回避などにつながるその研究は、大阪工大と神戸大の共同事業「科学技術振興機構(JST)社会還元加速プログラム(SCORE)大学推進型」に採択され、大阪工大初の学生ベンチャーの起業に期待がかかります。
パソコンが好きで高校の頃からプログラミングの勉強も始め、今ではAI(人工知能)を武器として使いこなす豊味さんですが、「AIに興味を持つようになったのは大学2年生の頃」と 意外にレイトスターターです。対話システムやニューラルネットワークなどAIの面白さに目覚めて、AIの勉強を深めたいと尾崎敦夫教授のゼミに。卒業研究で複数のセンシング機器とAIを組み合わせ、イベント会場などの人の数や動きを検知・予測するシステム開発に取り組むうちに、「危機管理システムとして使える」とビジネスチャンスを見いだしました。尾崎教授の後押しもあり、博士前期課程では実際の社会実装を目指すことに。実証実験は、枚方市で月に1度開催される「枚方宿くらわんか五六市」で段階的に実施。今年3月に取得したデータには、会場付近を通過する電車の乗客の想定外のWi-Fi 信号もキャッチしてしまったと思われる箇所も見つかり、「データ取得精度の向上が目下の課題です」と言います。また「機器のコストを下げることもいつも考えます」と話す時には既に経営者の顔をのぞかせます。研究者・経営者の二足のわらじを履こうとする毎日はとても忙しく「通学時間が惜しくて大学付近に引っ越しました」と苦笑します。
災害対策や感染症対策支援で注目されるシステムですが、「商店街の時間帯別混雑予想などにも役立てたい」と更に先のビジネス展開も視野に入れています。既に大阪府から商店街活性化への応用の相談があるなど、汎用性の高さに手応えも。駅など公共の場での調査ビジネスなど夢は広がります。会社の具体的な将来ビジョンを今はあえて描いていないという豊味さん。「ここまでやる、というより、どこまでできるか。自分への挑戦です」。未来の社長としての熱いまなざしがキラリ光ります。