「まち針でトウモロコシを作ったら可愛いかも」。昨夏、文具即売イベント「文具女子博」の関連企画「文具のアイデアコンペティション」への応募を考えていた碓井さんは、まち針の頭をトウモロコシの粒に模したデザインを思いつきました。針は、芯に見立てた針山に差します。イメージをコンピューターグラフィックスで描いて「まち針コーン」として作品を提出すると、次席の「優秀賞」を受賞しました。
子供の頃から立体を作ることが好きで、菓子箱で工作し、粘土を使ってビデオカメラを細部まで再現しました。高校時代の夢は建築士。大学を調べる過程でプロダクト(製品)デザインを知りました。大阪工大の空間デザイン学科では建築もプロダクトデザインも学べることから、二刀流を目指して進学しました。
学ぶうち、プロダクトデザインに強くひかれるようになりました。想像したものを実物大で作り、使い勝手を試せるからです。自作に対して教員や同級生からの批評を聞く中、「学外の評価も得たい」と公募に挑戦するようになりました。大学2年で初めてエコバッグのデザインコンペに応募すると、「アイデアいいね賞」を受賞。その後も、チョコレートの個包装紙デザインや福祉用具のアイデア、塗装ロボットの外装など約40の公募に挑戦し、10を超す入賞・入選を果たしました。
コンテストの情報サイトを定期的にチェックして、めぼしい公募をピックアップ。テーマを頭の片隅に置き、ヒントになりそうな情報を見つけたり、アイデアがひらめいたりしたらスマートフォンに書きためています。公募には思わぬ副産物がありました。入賞者同士でコミュニティーができるので、人脈が広がり、多彩な作風や活動を知って刺激を受けました。また、大学の卒業制作「m stool※」は、2023年度グッドデザイン・ニュー ホープ賞で入選。座ったり、積み重ねて机や棚にしたり、コンパクトに収納したりできるスタッキングスツールで、審査員からは「美しいと感じたものが素直に表現されている」と評価されました。
来春からは生活雑貨のデザイナーとして働く予定で、自分のデザインが大量生産されることに胸がときめきます。「『こういったものがほしかった』と感じてもらえる製品を生み出していきたい」。未来を語る瞳がキラリと輝いていました。
※写真中央の椅子