常翔啓光学園高に通っていた吉川さんが大阪工大空間デザイン学科に進学したのは、オープンキャンパスがきっかけでした。将来は建築関係の仕事がしたいと思っていた矢先、建築とプロダクトを掛け合わせた学びを展開する同学科に進学を決めました。
卒業研究で制作したのは、色覚多様性の理解を促すことを目的とした絵本です。特に「物の見え方は人それぞれなんだということを子どもの頃から知ってほしい」との思いで、楽しみながら学べる仕掛け絵本「イロイロトリドリ」シリーズを制作しました。ストーリーも絵も全て吉川さんが手掛けたこの世にたった一つの絵本です。
もともと「色」に関心があり、カラーコーディネーターの資格を持つ吉川さん。色の識別は人によって違う、ということを卒業研究のテーマにしようと思ったのは、一緒に焼肉を食べている時に知人が「茶色を区別しにくいから、火が通っているのか判断しづらい」とこぼしたのがきっかけでした。色の「見せ方」を考えていた吉川さんにとって、考え方ががらりと変わった瞬間でした。それから、色の「見え方」について学びを深め、特定の色が見にくい人、全てがモノクロに見える人など、さまざまな特性があることを知ったと言います。「いろんな見え方があっていい。そういう発想を子どもの頃から持っていたら、ダイバーシティが実現できるのでは」と考え、「色の見え方」をテーマとした仕掛け絵本作りに取り掛かりました。
吉川さんが制作した絵本『アオイロなトリたちのせかい』は全ページが青色で、同じ色でも濃淡や彩度によって識別のしやすさに違いがあることを理解できるようになっています。また、色への関心を高めるために作ったのは『カラフルなカメレオンたちのせかい』。この他にもモノクロでできたものなど合計で6冊を制作し、卒業作品展で披露しました。大人にも子どもにも大好評で「やってきたことが評価されたようでうれしかったです」。
4月からは同大大学院に進学する予定で、現在の研究を更に深めていきたいと話す吉川さん。将来の夢は「まだ漠然としています」が、絵本の制作を通して学んだことを生かして、「ユニバーサルデザインの実現ができたら」と語ります。色によって多様性を生み出す姿がキラリ輝いています。