小学校入学と同時に自宅近くの町道場で剣道を始めた小園さんは、土日も稽古や試合でつぶれることが多く、「『やめたい、しんどい』といつも思っていました」と振り返ります。それが変わったのは中学になって出会った指導者から剣道の楽しさを教わったからでした。もともと体が大きい方ではなかったので、自分より大きな相手と激しく打ち合うことより、相手の攻撃を受ける静かな剣道のスタイルが身についていきました。
「周りからは『学生っぽくない』とか『欲がない』と評されますが、勝ちに行くというより負けない剣道を目指しています」。得意技は「出ばな小手」。相手の動きに瞬時に対応します。その静かで無欲の剣道で、5月の第65回関西学生選手権大会を勝ち抜き、ベスト30に入って7月の全日本学生選手権大会への出場を決めました。部としては10年ぶりの快挙です。初戦の相手は全国代表レベルの有名選手ですが、気負いはありません。「剣道は面越しの相手の目の動きだけで次の出方を読み合うなど、心理戦的駆け引きも面白いです」と話します。現在、主将として9人の部員を率います。礼儀やあいさつなどは厳しく徹底しますが、その剣道スタイル通りに「楽しく」が部のモットー。練習で声を荒げるようなこともありません。
小園さんは大手自動車メーカーに就職が内定しています。小さいころから剣道とともに好きだった自動車にかかわりたいと決めましたが、会社に剣道部があることも後押ししました。「自動車の軽量化のためのスポット溶接」の卒業研究に取り組みながら、全国大会や秋の4段昇段審査への練習にも余念がありません。研究室に連日遅くまで残り、「家に帰るのは睡眠のためだけです」と笑います。
今の彼女も剣道を通じて出会いました。「剣道とは生涯スポーツとして一生付き合うつもりです」と言う小園さん。「負けても楽しい剣道はあります」と言い切る剣道へのまなざしがキラリと光っています。