赤澤 春彦准教授

摂南大学 外国語学部 外国語学科

“技術系の国家官僚”だった陰陽師
その知られざる歴史を掘り起こす

研究最前線

FLOW No.92

赤澤 春彦 准教授
Profile

赤澤 春彦 准教授

あかざわ・はるひこ 1998年中央大学文学部国史学科卒。2009年同大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程修了。新宿歴史博物館埋蔵文化財調査員、東京都江東区教育委員会文化財専門員、日本学術振興会特別研究員などを経て、2013年摂南大学外国語学部外国語学科講師。2017年から現職。学芸員。博士(史学)。長野県出身。

奈良時代から存在した陰陽師は占いで怨霊や鬼を退治したと伝わります。「鬼滅の刃」の世界観には陰陽道の影響が少なからず見られます。「大和言葉でオンと呼ばれていたものに、漢字が入ってきて鬼の字が当てられました。オンは隠に通じ、もともとは隠れて見えない恐ろしいものを指しました。今ならさしずめ新型コロナウイルスですね」と赤澤准教授。角の生えた鬼の姿は後世にできたと言います。疫病のような恐ろしく、正体の分からないものを占いで吉か凶かを判断し、凶ならば封じ込め、遮断するための結界を張るという“ロックダウン”も陰陽師が担いました。「陰陽道で鬼の気とは病気のことで、それを封じる儀式もありました」と話します。

祈祷師的、オカルト的なイメージが強い陰陽師ですが、「陰陽師は時を司る暦や天変地異を予測する天文の最新知識で朝廷に仕えました。暦と天文は重要な農業にも必須の知識で、律令制の国家組織に属した科学技術官僚とも呼べる存在でした」と新鮮な陰陽師像を赤澤准教授は強調します。陰陽師ブームの中心となった安倍晴明は平安時代に活躍しましたが、赤澤准教授の主な研究テーマはその後の鎌倉時代以後の中世の陰陽師の歴史です。「私の学生時代には分かっていないことが多すぎて、逆に研究のやる気が出ました」と振り返ります。鎌倉幕府にも多くの陰陽師が召し抱えられて、国家運営にかかわっていたことが分かっていきました。「陰陽道を担ったのは主に賀茂家と安倍家の2家でしたが、朝廷の陰陽寮でのポストは限られていたので、分家の陰陽師たちが地方に活路を求めたのです」。研究を進める中で15年前に大きな発見がありました。宇佐神宮(大分県)の史料を調べていて、神官の一員に陰陽師がいたことが分かったのです。陰陽師が神事やお祓いの大事な役割を担っていたことが記録されていました。「京都の陰陽師とは直接つながりのない民間の陰陽師が地方に根付いていたのです」。この研究成果を含めた最新の陰陽師研究の学術書『新陰陽道叢書第二巻中世』(名著出版)を代表編者として1月に出版。10年以上かけて1万件の史料のデータベース化もするなど、最近の陰陽道研究の盛り上がりの一翼を担っています。「陰陽道が人々の考え方や生活に与えた影響を解き明かしたいですね」と新たな発見を求める日々が続きます。

【陰陽道】中国古代の思想「陰陽五行説」から派生した日本固有の呪術・学問の体系

陰陽師の歴史研究の編・著書
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