西村 太志准教授

広島国際大学 健康科学部 心理学科

子育て期の対人関係を読み解き
人と人のより良いつながりを追究

研究最前線

FLOW No.92

西村 太志 准教授
Profile

西村 太志 准教授

にしむら・たかし 1998年広島大学総合科学部総合科学科生体行動科学コース卒。2003年同大学院生物圏科学研究科環境計画科学専攻博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員、東亜大学専任講師などを経て、2006年広島国際大学臨床心理学科講師。2016年同心理学科准教授。2020年から現職。専門社会調査士。博士(学術)。熊本県出身。

「コロナ禍の巣ごもりで『鬼滅の刃』にも関心を持つようになりました」と笑う西村准教授。家庭内の会話が増えて「妻から2人の息子に広がった」鬼滅ブームに自身も巻き込まれていったと言います。専門の社会心理学 の「イノベーター理論」でこうした流行現象を、「2段階の流れがあって、最初は新しいものに敏感なオピニオンリーダーが飛びつき、やがてその影響を受けたフォロワーに広がります」と説明します=図。オピニオンリーダーの持つ多様性とフォロワーの特徴である同質性のバランスの上に成立する流行ですが、人と人のつながりの構築に関心のある西村准教授にとってこの多様性と同質性は研究のキーワードです。

大きな研究テーマは「子育て期の親の対人関係」。特に現代の核家族社会では妊娠・出産を経た女性の対人ネットワークは小さく同質なものになりがちです。孤立化を防ぐために、どうすれば多様なネットワークを作れて人とのつながりを広げられるのか。西村准教授は<幼少期や青年期には、ネットワークを持つ他者を介して対人関係構築を拡充・維持しようとする>という「社会的代理人仮説」を子育て期の母親に適用しようとしています。オンラインでの500人規模の全国調査も実施。その結果、夫が社会的代理人としてサポートすることの重要性が明確になりました。「子育て中の母親には、夫のようなある程度同質性のある代理人が安心感を生む一方で、多様に変化する世の中とのつながりを絶たないリスク回避にもなっています」と話します。

男性と女性のつながりの構築の研究もテーマの1つです。実験的にグループお見合いを企画し、参加者全員順々に相手を変えて1対1の会話を繰り返してもらう「スピードデーティング」の研究も全国の社会心理学研究者と共同で進めています。未婚率の上昇や少子化という問題を抱える日本で、特にシャイな人の恋愛を後押しするヒントにもつながる研究です。これまでの研究では「シャイな参加者は異性とマッチングしにくいと思われがちですが、会話を繰り返していくと次第に慣れてくるため、恋愛の進展にあまり影響がないことが分かってきました」と話します。対面のコミュニケーションが取りにくくなったコロナ禍の中でも、西村准教授のより良い「人と人とのつながり」を追究する日々が続いています。

流行の「2段階の流れ」モデル
流行の「2段階の流れ」モデル

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