上月 具挙准教授

広島国際大学 保健医療学部 医療技術学科

ペースメーカーなどのワイヤレス充電で
電池交換手術を減らして患者の不安も低減

研究最前線

FLOW No.113

上月 具挙 准教授
Profile

上月 具挙 准教授

こうづき・ともたか 2000年大阪工業大学情報科学部情報処理学科(現:情報知能学科)卒。2007年福井大学大学院工学研究科ファイバーアメニティ工学専攻博士後期課程修了。2007年広島国際大学工学部機械ロボティクス学科助教などを経て、2023年から現職。博士(工学)。兵庫県出身。

電気電子工学の専門家である上月准教授は、広島国際大医療技術学科に着任したことで医療分野に貢献できる新たなテーマを探していました。そのヒントは、自身の入院体験で見つかりました。約8年前、同じ病室にCIED(心血管埋め込み型電子機器)を装着した心臓疾患の患者さんがいて、「交換手術が憂鬱なのです…」と聞いたことでした。ペースメーカーなどのCIEDはリチウム電池が内蔵されていますが、約10年で電圧が低下し、電池交換の手術が必要になります。「若い患者では、その後の長い人生において何度も手術することになる。手術が重なると感染症や血管損傷のリスクが高まり、精神的苦痛も大きいことだろう」。退院すると上月准教授はCIEDを充電できる電源システムの開発を始めました。

試作したシステムはCIEDの従来の一次電池はそのまま利用したうえで、補助電源として繰り返し充電可能なコンデンサを追加。充電方式はスマホでも使われるワイヤレス充電で、充電中の発熱も少ないことから安全に皮膚の上から充電できます。充電可能な二次電池を内蔵することもできますが、二次電池も寿命が7、8年で、しかも頻繁に充電する必要があり、一次電池とコンデンサのハイブリッド方式の方が優れていると考えました。一次電池の電圧が低下してきたらコンデンサを使うことで一次電池の寿命を相当に延ばせるだけでなく、充電頻度が20日に1回程度、充電時間も1回数十分程度と患者にはありがたいシステムです。既に試作のペースメーカーがこのシステムで動作することも確認しました。上月准教授は今後、コンデンサの最適な電気容量と充電電圧を追求するとともに、コンデンサの小型化と大容量化で充電頻度を少なくすることを目指しています。

CIED をワイヤレスで充電する新システムの模式図
CIED をワイヤレスで充電する新システムの模式図

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