谷 めぐみ 講師

摂南大学 現代社会学部 現代社会学科

円熟した競技の楽しみ方があふれる
マスターズスポーツの魅力を発信

研究最前線

FLOW No.107

谷 めぐみ 講師

 陸上の七種競技の選手としてインターハイにも出場した谷講師ですが、大学時代に2度のひざ靱帯損傷で競技を断念。手術の入院中に一念発起し生涯スポーツについてベッドの上で猛勉強を始めて大学院に進学。中高年がスポーツを始めた要因の研究などをするとともに尼崎市スポーツ推進審議会など行政の活動にも関わるようになりました。

 マスターズスポーツに関心を持つようになったきっかけは、2004年に神戸大学の研究室を中心に始めた「マスターズ甲子園*1」でした。「これまでの人生や家族への思いを抱えた元球児の中高年の皆さんが、夢がかなって生き生きしている姿を見て、マスターズスポーツの奥深さに感動しました」。マスターズスポーツはアスリートに限定したエリートスポーツではなく、誰もが楽しめる「人生のためのスポーツ」という理念を国際マスターズ協会は掲げています。現在各競技でマスターズ大会が開催され、年齢区分に分かれて多くの人がそれぞれに目標を持って参加しています。国内では国体の中高年版とも言える日本スポーツマスターズや、4年ごとに開かれる世界大会のワールドマスターズゲームズといった総合競技大会もあります。2027年5月には世界大会が関西で開催される予定で、国外から2万人、国内から3万人の参加が見込まれています。

 昨年5月に韓国で開催された国際大会の調査で出会った選手に刺激を受けた谷講師は、一度は断念した陸上競技を再開。10月のマスターズ大会でやり投げに出場し、いきなり金メダル。「実は私の年齢区分の参加者は1人で、記録を出せば金メダルでした。区分によってはメダルを狙えるというのもマスターズ大会の面白さですね」と笑います。谷講師らが日本マスターズ大会参加者に行った意識調査では、スポーツ本来の「する」「極める」「競う」という楽しさ以外に、「集う」「学ぶ」「支える」「見る」「魅せる」といった楽しさ、更にはユーススポーツにはない「育てる(子供や教え子に学んでもらう)」「癒やす(仕事や日常からの解放感)」よみがえ「甦る(友人やライバルとの再会)」「巡る(開催地の観光)」といった多様で円熟した楽しさがあることが分かりました。

 また、成人がスポーツ・運動に取り組む際の行動についての縦断的な研究調査も実施。興味あるスポーツや運動に出合うと、女性は取り組む熱量が高く、男性は継続性が高いことが分かりました。

 谷講師は現在、ディスクゴルフ*2を徳島県東みよし町の地域資源を生かした町おこしのイベントに育てようと奮闘中です。「大人が楽しむ姿を見せ、勝つことやうまくなることを超えたスポーツの価値を子供たちに学んでほしいです」。自ら実践する生涯スポーツの追求を今後も続けていきます。

徳島県東みよし町の人たちとディスクゴルフを実施
徳島県東みよし町の人たちとディスクゴルフを実施

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