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南 景子 助教
みなみ・けいこ 2015年京都大学薬学部薬学科卒。同年から現職。薬剤師。博士(薬学)。大阪府出身。
注射薬、飲み薬、塗り薬など、私たちが接する薬にはさまざまな種類があります。南助教は、ほとんどが注射で投与されている「ペプチド医薬品」を口から服用する経口剤として開発する研究を続けています。そこには「痛みを伴わず服薬が簡便な製剤とすることで、患者のQOL(生活の質)を保てれば」という思いがあります。
医薬品の多くは化学合成で製造された低分子医薬品です。一方、タンパク質を成分とし分子量の大きいバイオ医薬品は、がんや治療薬の無かった病気などへの効果が期待され、最近の薬剤開発の主流となっています。南助教は、バイオ医薬品としては比較的分子量の小さいペプチド医薬品について研究しています。例えば糖尿病治療に使われるインスリンは腹部への自己注射が必要など患者の負担が大きいため、「少しでも負担を軽く」との考えからです。実現の鍵になる技術が、薬を体内の最も効果的な場所に、安全に届けるDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)。血中に直接薬を入れる注射と違い、経口投与の場合、薬が消化管の中で溶け、細胞膜を透過して、初めて体内に吸収されます。つまり、水に溶けにくかったり膜の透過性が悪いと、吸収されにくく十分な効果が得られません。南助教はDDSの中でも「リポソーム」というリン脂質膜で薬剤を包み、溶解性を高めることで吸収率を向上させられる薬剤の開発を目指しています。別の免疫抑制剤の実験では、溶解性の改善や望ましい血中濃度維持のデータを得ており、リポソームによる「製剤開発の可能性」を見いだしました。もう一つの研究は、経口投与のひとつである舌下吸収。ペプチド医薬品で唯一、舌下投与されている夜尿症治療薬のデスモプレシンにヒントを得ました。この製剤は経口投与が可能な一方で薬剤の吸収率はなお低く、薬効に個人差があるため、「DDS技術としてゼリー剤を使ってより吸収率を上げ、効果を安定させられないか」と取り組んでいます。
もともと製薬企業を目指していましたが、縁あって教員職に就いたという南助教。発見されて約100年のインスリンですが、経口薬はいまだほとんど出ていません。「研究は難しい。でも結果が少しでも出るとやりがいを感じます」と、面白さも味わっているようです。



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