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齋藤 瑛介 講師
さいとう・ようすけ 2009年茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科卒。2019年静岡県立大学大学院薬食生命科学総合学府食品栄養科学専攻博士課程修了。筑波病院と青森慈恵会病院で管理栄養士として勤め、山形県立米沢栄養大学助手などを経て、2021年から現職。博士(食品栄養科学)。青森県出身。
日本人のがん部位別死亡率が上位である大腸がんをはじめ、疾病の予防が期待できる「食事」の研究を行っているのが、管理栄養士でもある齋藤講師です。今取り組んでいるのは、“腸管内胆汁酸代謝” に与える食事の影響の解明。大腸がんの増加原因の一つに、肉類など動物性脂肪の摂り過ぎが言われています。脂肪は、肝臓で作られる胆汁酸によって可溶化されますが、多く摂取することによって胆汁酸の分泌量が増加。そして胆汁酸は腸内細菌によって代謝され、二次胆汁酸となり大腸に流入します。これに発がん性が認められるため、がんのリスクが高まるとされています。既報の研究では「食事と胆汁酸」、「食事と腸内細菌」といった2因子間を調査する研究はありましたが、齋藤講師は腸内細菌叢と排便を加えた4因子を俯瞰して追究することで、より確度の高い答えを出そうとしています。
2020年に行った調査で、大きな発見がありました。約70人の健康な人たちの胆汁酸の排泄状況、食事内容、腸内細菌の働きを調べたところ、胆汁酸の排泄量が多い人と少ない人では50倍の差があり、動物性脂質の高い摂取と不溶性食物繊維の低い摂取の組み合わせで、糞便中の二次胆汁酸濃度が高まる可能性が示唆されました。予想外なことに、ヒト肝臓で合成される一次胆汁酸を高く排泄している人が一定数存在していました。これは、胆汁酸のもとになるコレステロールが体外に出ているという証拠で、突き詰めれば、高コレステロール血症などの病気の治療につながるかもしれません。一次胆汁酸を優位に排泄した人は、他の二次胆汁酸を優位に排泄した人とは明らかに異なる腸内細菌叢を有しており、更に食事を調べると、食物繊維の摂取量が多いことが判明。現在は食物繊維の有効性についても追究しています。
この他、「日本人の減塩を促進する戦略提案」「リンを過剰摂取する若者への警鐘」など、齋藤講師の研究は一般の人にも身近なものばかり。そんな自身の研究の意義は「管理栄養士にエビデンスを与えることにある」と語ります。「患者さんに説得力のある栄養指導を行ってもらうために、科学的な根拠を示すのが私の役目です」。現場で生きる研究がこれからも続けられていきます。



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