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尾茂 康雄 准教授
おも・やすお 2000年慶応義塾 授業で市松模様の商標出願を題材に議論大学環境情報学部環境情報学科卒。同年国家公務員試験に合格し特許庁入庁。審査業務部審査官、商標審査基準室、審判部審判官、同部審判課審判企画室課長補佐などを経て、2019年から現職。東京都出身。
特許庁で長年商標出願の審査に携わった尾茂准教授は、身近なニュースを知財の知識で読み解く授業をしています。「鬼滅の刃」のヒットで、集英社が登場人物の着る羽織の柄(市松模様など)を商標出願したニュースもすぐに取り上げました。昔から知られた市松模様のような柄の商標登録が認められるのか、学生らに考えさせたのです。商標権は商品やサービスについてのブランドの信用を守るものであり、その商品を誰が作ったのかを示し他と区別できるものであるかを審査では見ます。「伝統的な柄であり既に多くの人が使っている市松模様は、独り占めさせていいのかという独占適応性の観点からもハードルは高そうです」と予想します。
尾茂准教授の主な研究テーマは各国の商標制度の比較です。日本の制度を企業にとってより使いやすいものとする提案も考えます。「例えば2014年まで日本では色そのものや音は商標として認められませんでしたが、世界の多くの国に合わせて商標法が改正されました。その改正にも審査官としてかかわりました」。審査では法律があっても判断が微妙な案件も多く、160人ほどいる特許庁の商標審査官が頭を悩ませると言います。制度と現実とのギャップに目を配り、日本だけでなく世界の流行にもアンテナを張る必要もあります。日本ではまだ知られていない海外で有名なブランドなどもできる限り調査することが求められるからです。侵害すると『10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金』などの刑事罰がある強力な権利です。「“知らなかったでは済まされない” 権利のため、知財意識の低い企業が海外で痛い目に遭う事例も多い」と日本の課題を指摘します。ほとんどの国で先願主義が採用され“早い者勝ち” な面もあるため、中国で日本の商標を横取りしたような事例が注目されましたが、逆に海外で人気になった商品名が日本で商標登録されてしまい問題になったことも。「強力な権利だけに知財を武器に中小企業でも大企業と対等に戦うことが可能です」と話します。
学生らには産業界で不足する知財マインドを持った人材になってもらいたいと考えています。法律を使いこなすために常に勉強が求められる世界ですが、「身近でも分かっていなかった世の中のことを分析できる」知財の魅力を伝えようと日々の授業に工夫を凝らします。



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