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アディテア・プラダン(Aditya PRADHAN)さん

大阪工業大学 建築学科2年

日本の耐震建築を学びネパール大地震からの母国の復興の力に

FLOW No.84

大阪工大にネパールから留学中のアディテア・プラダンさんです。2015年4月 25 日に発生したM7 .8のネパール大地震では9000人近くが亡くなり、歴史的建造物を含む多くの家屋が倒壊しました。この被害を目の当たりにし、耐震建築を学んで母国の復興に役立ちたいと日本留学を決めました。アディテアさんに母国の生活や日本の建築の魅力などについて聞きました。

Profile

アディテア・プラダン(Aditya PRADHAN)さん

1997年兵庫県伊丹市生まれ。2001年、4歳で両親の母国ネパールへ。高校卒業後の2016年に留学のため来日。大阪市内の日本語学校に2年間通い、大阪工業大学建築学科に入学。父も同大学・大学院で建築を学び、カトマンズで建築事務所を経営。母も日本の大学で経済学を学んだ。同じように建築を専攻する兄はオーストラリアに留学中。ヒンドゥー教徒。愛称は ネパールでも日本でも「アディ」。

留学先に日本を選んだ 理由を教えてください。

私は小さいころから絵を描くのが好きで、父が建築家で設計事務所を経営していることも影響して建築家になりたいと思っていました。高校卒業後の海外留学を考えていましたが、日本に決めた理由は2015年のネパール大地震の体験でした。9000人近い人が亡くなった大きな被害で、有名な世界遺産のダルバール広場の王宮をはじめ多くの建物も倒壊しました。父が設計した3階建ての自宅は無事でしたが、それでも大きく揺れました。高校の同級生たちと瓦礫の片付けなどのボランティア活動をする中で、地震に強い建築を学びたいと強く思うようになったのです。耐震性で定評のある日本で学ぼうと決め、建築事務所を経営する父が留学した大阪工大で建築を学ぶことを決めたのです。父は自分の母校へ私が留学することをすごく喜んでくれました。

日本に留学中のご両親のもとで生まれ、4歳まで兵庫県伊丹市で育ったと聞いていますが、留学で日本語に不安はあったのですか?

日本では両親と日本語で話していましたので、ネパールのカトマンズに帰国当初は日本語しかできず苦労しました。その後は両親の教育方針もあり、小、中、高校ともネパー ル語と英語で教育を受けてきましたのでほとんど日本語を忘れてしまいました。2016年に来日してからは大阪市内の日本語学校で2年間、日本語を学び直し、同時に大阪工大を受験する勉強も進めました。数学、物理、化学の受験科目も試験問題は日本語で出題されるので、専門用語の日本語を覚えるのは大変でした。大阪工大入学前に日本語能力試験のN2(2級)に合格し、今はあまり日 本語に不自由はしませんが、やはり漢字には苦労しました。学校以外では日本の映画やアニメを見たり、日本語の歌を聴くことが勉強になりましたし、コンビニなどのアルバイトで生きた日本語も学んできました。

留学生活はどうですか?

1年生でも設計演習があり、勉強がとても楽しいです。日本は世界の建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を7回(8人)も受賞していて、安藤忠雄先生などの日本の現代建築に興味があります。それだけでなく日本に古くから残る神社仏閣などの木造建築や城も好きで、休みの日にはデッサンをするために各地へ旅行しています。清水寺には3回も行きました。ネパールの建物はレンガ積みの耐震性の低い脆弱な構造のものが多かったので地震で倒壊しました。1000年以上も地震に耐えてきた法隆寺は凄いと思います。最近教えてもらった地下鉄の災害に配慮した駅舎の造りにも感心しました。ミニマリスティック(シンプルさを追求するスタイル)な日本建築のデザインも好きです。古いものも新しいものも大きな刺激になっています。

日本の食事に抵抗はありませんでしたか?

日本語は忘れていましたが、日本料理はずっと食べて育ちました。母が日本の料理が好きで、ネパールでも味噌汁を毎日のように作ってくれましたし、我が家ではカレーも 日本式のカレーが出ました。だから食べ物では全く問題がありません。自炊も時々はしますが、学校の食堂やコンビニ弁当で済ますことが多いです。

将来の夢を教えてください。

大阪工大で大学院まで行きたいです。今も設計事務所でアルバイトをしていますが、卒業後はまず日本の建築会社で仕事をしたいです。その後はネパールに帰って主に住宅の設計をしたいです。父の建築事務所を手伝ったり、自分の会社を立ち上げることも考えています。もちろん日本で学ぶ木造建築の技術を生かしてネパール大地震で倒壊した世界遺産の寺院などの復旧の力になりたいとも思っています。もっと多くの日本の建築を見て回るのも夢で、まだ行ったことのない姫路城や東京スカイツリーなども訪れたいです。
設計演習の課題で制作した住宅の内装デザインと模型
お国自慢:ネパール連邦民主共和国
多民族が共生 ヒマラヤの雄大な景色
ネパールは100以上もの民族からなる 多民族国家です。私の一族はカトマンズ周辺に多いネワール族で、各分野で活躍していますが、特に建築技術に優れ歴史的な寺院や王宮の建築に携わってきました。 ネパールで一番自慢に思うのは、これだけの多民族が対立することなく仲良く共生してきた文化です。中学や高校でもクラスの中の友だちにはさまざまな民族の出身者がいました。
ネパール観光のお勧めはもちろん雄大なヒマラヤ山脈の景色です。ネパール第2の都市ポカラはアンナプルナをはじめとした7000~8000m級の雪を頂く山々が一望できる絶好の観光ポイントです。特にそこから見えるマチャプチャレという山が有名で、神聖な山として登山は禁止されています。「魚の尾」という意味で、その特徴的な形を表し、「ネパールのマッター ホルン」とも称されます。
  • 地震(2015年)前のカトマンズの街並み
  • 高校の友だちとカトマンズの中心街を観光するアディテアさん(右)
  • スワヤンブナート仏塔
  • ダルバール広場
  • ナガルコートから見える ヒマラヤ山脈

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