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ドナルド・チェリー(Donald Cherry)准教授

広島国際大学 リハビリテーション学科

日本語修得に四苦八苦
自らの経験踏まえ気付き重視の英語教育を

FLOW No.103

アメリカ合衆国シカゴ出身で、広島国際大で英語を教えるドナルド・チェリー先生です。今でこそ日本語はほぼマスターしましたが、来日当初は日本語に苦労しました。「英語が難しいと感じる学生の気持ちはよく分かる。だからこそ興味のある切り口から勉強するのが効果的です」と話します。

Profile

ドナルド・チェリー(Donald Cherry)准教授

1982年ルーズベルト大学卒。94年スクール・フォー・インターナショナル・トレーニング大学院修了。帝塚山中学・高校、北陸大学などを経て、2005年広島国際大学人間環境学部助教授。2019年から現職。日本人の妻と2人の子を持つ。趣味はサイクリングと温泉巡りで、特に日本人にもあまり知られていない秘湯を巡るのが好き。

来日のきっかけについて教えてください。

 もともとはシカゴでジャーナリストをしていました。当時の夢は、古びたマンションを修理してホームレスの人たちのために住まいを提供することだったのですが、条件に合致するマンションがなく苦労の日々が続いていました。その頃、英語の読み書きが十分でない子供に教えてくれないか、という依頼があってボランティアで指導を始めたのが、英語教員としての第一歩です。その後、1988年に来日し約3年間、企業に勤める日本人に英語を教えました。この道を本格的に歩むには、よりレベルの高い学位が必要だと感じて91年に帰国しアメリカの大学院で修士号を取得、94年に再び来日して以降、主に日本の大学で英語教師として教壇に立っています。

日本での生活を振り返ってどうですか。

 来日して一番驚いたのは、電車です。初来日した1988年は大阪にいたのですが、まず、乗車人数の多さに「一体何人乗るんだ?」とあっけにとられました。また、東京では地下鉄の路線の多さに度肝を抜かれました。そんな経験から、日本はどこにいてもすぐに電車に乗れるものだと思っていたので、地方に旅行に行った時は困りました。サイクリングをしていて、ちょっと電車に乗ろうとしても駅が全く見つからないのです。ようやく見つけた駅で時刻表を確認したらダイヤは1時間に1本で、都会との大きな差にびっくりしました。
 苦労したのは言語です。来日当初は飲食店で天丼1つ頼むのもおぼつかず、メニューを指で指し示すのが関の山でした。そんな自分が情けなくて、一生懸命勉強したのを覚えています。今ではすっかり慣れて、温泉巡りを楽しんだり、広島・宮島などの観光スポットに出かけたりしています。日本はどこに行っても治安が良くて安心安全です。和食はおいしいうえに体に優しくて素晴らしい。とても気に入っています。

英語ができるようになるには、何をすればよいですか。

 単に文法や単語を覚えるだけではなく、音楽や映画など何でもよいので自分が好きなトピックに関連する英文を多読することをおすすめします。その際、自分の実力より少し難易度の低い文章をたくさん読んでください。この学習方法を「Extensive reading」と言います。大量の文章に触れることで、おのずと理解力がアップしていきます。
 スピーキングでは、たとえば電車の乗り継ぎ方法を尋ねるなど、実生活に即したシチュエーションを意識して練習するとよいでしょう。日本で言う「生きた英語」ですね。単語1つ1つの意味を理解するのも大切ですが、できるだけ単語間を区切らずに一息で話す練習もしてみましょう。英語特有のリエゾン(単語の音と音がつながり、発音時に音が変化すること)が身についてきます。

広島国際大では、どんな授業をしているのですか。

 授業中は学生の「へえ、そうなんだ」という新しい気づきと、学生同士の対話を重視しています。同じ「Got」でもイギリス英語とアメリカ英語で発音が違うことや、 「Right」と「Light」の響きの違いなどは実際に言ったり聞いたりという体験を通して学んでもらうために工夫をしています。また、授業とは別に、毎週木曜日のお昼休みに「English House」という時間を設けています。英語力を伸ばしたい、あるいは苦手を克服したいという学生向けにランチをしながら英会話のレッスンをしています。
 日本語と英語では、使う文字の数や種類が違うので学生が苦労する気持ちは良く分かります。私も、漢字・ひらがな・カタカナの使い分けなどには苦労しました。そのため学生には「全く違う言語なのだから最初は難しく感じて当然。その違いを楽しむことが上達のスピードを左右します」と伝えています。
「アンタッチャブル」の名シーンが撮影されたシカゴユニ オン駅ⓒInternational Journal of Contents Tourism
生まれた時に家族が住んでいたシカゴのアパート
趣味のサイクリングで訪れた広島の山間部
お国自慢:アメリカ合衆国
さまざまな人種が暮らす「Windy City」多くのドラマ・映画の舞台にも
イリノイ州北東部に位置するシカゴは、五大湖の1つミシガン湖から強い季節風が吹きつけることから「Windy City(風の街)」と呼ばれ、12月にもなると気温が氷点下になる日も珍しくありません。積雪もありますが平野部なので、子供の頃はスキーやスノーボードよりも「Snowball fight(雪合戦)」でよく遊びました。寒さの厳しい街ですが、古くから内陸交通の要衝として発展してきた都市でもあり、人口はニューヨークとロサンゼルスに次ぐ国内第3位。さまざまな人種が暮らしており、黒人の割合は約3割と全米平均よりも高い数値となっています。
 また、ドラマや映画の舞台としても有名です。人気コメディー映画「ホーム・アローン」シリーズの主人公一家が暮らすのはシカゴです。禁酒法時代のアメリカを描いた「アンタッチャブル」は名シーンがシカゴユニオン駅で撮影されたとあって、数多くの観光客が訪れています。
 地理、気候、文化などさまざまな魅力と特長を抱えるシカゴは、自慢のふるさとです。

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