太田 夏海さん

アドベンチャーワールド(アワーズ白浜事業所) 飼育部マリン課

ペンギンに囲まれる飼育スタッフの夢を実現 種の保存へ
人工授精に携わる新たな夢も

Graduate Voice 活躍する卒業生

FLOW No.89

Profile
おおた・なつみ 2014年常翔学園高校卒。2018年東海大学生物学部海洋生物科学科卒。同年アワーズが運営するアドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)入社。同施設内のショップ勤務を経て、2019年から現職。大阪府出身。

常翔学園高の卒業生の太田夏海さんは、幼いころからの夢「水族館でペンギンの飼育スタッフになる」を和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで実現しました。まだ新米の飼育スタッフですが、担当する約450羽のペンギンがいかに幸せに暮らせ、その魅力をゲストらによりうまく伝えられるか、を考え抜く毎日です。「ベンギンは『飛べない鳥』ではなく、『泳げる鳥』です」と話す太田さんのペンギン愛は尽きることがありません。

3歳から水泳を始めた太田さんは、家族でよく足を運んだ水族館でイルカなどの海獣系動物たちの泳ぎに魅了されていきました。特にペンギンの推進力の強さと美しいフォームに心惹かれ、いつしか将来は水族館でペンギンの世話がしたいと夢を抱くように。幼心に抱いた目標はぶれることはなく、高校卒業後は大学の海洋生物科学科に進学。ペンギンの遺伝子の系統解析をテーマに卒業論文を書き上げました。

ペンギン愛にあふれた太田さんですが、入社後の最初の配属は施設内のギフトショップで、子供相手の接客に不安と苦手意識を抱えていました。しかしある時、ぬいぐるみを抱えた幼い子が「見て!この子の里帰りだよ」と、以前ショップで購入したぬいぐるみを持ってわざわざ見せに来てくれたのです。「ショップは単にグッズというモノを販売するだけではなく、思い出も提供しているんだ」と感動した太田さん。以降は、子供の目線を意識してより誇りをもって仕事に取り組むようになったと言います。

ペンギンの飼育担当になった今も、子供の目線を大切にするのに変わりはありません。特に給餌の際は、子供たちが見やすいように位置にも気を配ります。給餌はペンギンたちの健康管理やトレーニングのために非常に大切な仕事です。「食べる量で1羽1羽の体調や気持ちの変化にも注意を払います」と語る太田さんはペンギンをたちどころに見分けます。

1羽1羽を見分けながら給餌する太田さん

そんな太田さんの今後の目標は、ペンギンの人工授精に携わり種の保存に貢献することです。飼育下での自然繁殖のみでは特定の遺伝子に偏るなどの問題があり、羽数維持・遺伝的多様性を保つためには人工授精の技術が必要です。しかし、エンペラーペンギンやキングペンギンの人工授精は非常に難しく、日本でもあまり例がありません。専門の知識に加え高い経験値が必須であるため、夢へ向かって「今は基礎の‟き” を学ぶ時」と先輩飼育スタッフの下で仕事に励む毎日です。

高校時代、勉強とソフトボール部の活動を苦労しつつも両立させた太田さん。特進コースに在籍していたので部活動に参加できる時間が短く、「最初は期待されていなかったと思います」と苦笑します。しかし、ひたむきにバットの素振りをする姿を見た顧問の先生が夜遅くまで練習に付き合ってくれるようになり、プレーにも手応えを感じられ、やがてチームの信頼も得られるようになったと言います。大学受験でも苦手の英語を先生の特別指導で頑張り、海洋生物科学科に合格。ペンギン飼育スタッフの今につながりました。「努力しても報われる保証はなく、自分の望んだ結果にはならないかもしれませんが、いつか何かの形で実を結びます」。太田さんから後輩たちへの力強いメッセージです。

活躍する卒業生