目指せ!オリンピアン 世界が舞台だ
10月にアルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた第3回夏季ユースオリンピックの7人制ラグビー(セブンズ)で3位入賞の銅メダルを獲得した男子セブンズ日本代表で常翔学園高ラグビー部の石田吉平さん(3年)もその一員として活躍しました。常翔学園内には全国レベルで活躍し、将来の五輪出場も期待される多くの中高生アスリートたちがいます。今回はその中から石田さん、常翔学園高2年で水泳部の奈須一樹さん(2018年全国高校総体200m背泳ぎ優勝)と井戸畑和馬さん(同3mシンクロ板飛び込み3位)、常翔啓光学園中3年の酒井優英さん(全国都道府県対抗中学バレーボール大会*1の大阪代表)の4人の皆さんに集まってもらい、全国で戦う心構えや2020年の東京五輪への思いなどを聞きました。
魅せる飛び込み きれいな背泳ぎ 自己犠牲のラグビー つなぐバレーボール
ー自分の競技の一番の魅力は何だと思いますか?また自分の強みを教えてください。
井戸畑:飛び込み競技の魅力は、高いところから飛び込んでも水しぶきが少ないことや、入水の角度やその美しさ、ひねりや回転などの技術で観客を魅了することができることです。入水時の水しぶきが少ないと小さい時から言われていて、そこが自分の強みです。でもそれだけでは試合に勝てません。中1の時にあと一歩でジュニアの世界大会の切符を逃したことがあり、それがきっかけで本気で練習に取り組むようになって成績が伸びました。
奈須:僕は200m背泳ぎが専門ですが、背泳ぎは他の泳ぎ方に比べてきれいな泳ぎをする人が速いというのが魅力です。100mと違って200mは後半にばてるのでいかに楽にきれいに泳ぐかということが大事です。僕の持ち味は後半に強いということです。
酒井:バレーボールはチームスポーツなので、みんなでボールを拾ってつないで上げて、最後に決めた瞬間をみんなで喜べるというのが一番の魅力です。僕の強みはチームメートより長身(183㎝)で、スパイクやブロックで高さを生かせ、チームに貢献できることです。
石田:ラグビーの魅力は「One for All , All for One(1人は皆のため、皆は1人のため)」という自己犠牲の精神で、自分が倒れてもボールをつないでトライまで持っていくことです。僕は15人制の時はフルバックが多く、セブンズではスイーパーというどちらもバックスのポジションです。167㎝と小柄ですが、すばしっこさを生かしてステップで抜いていくのが得意です。
ー全国大会・全国レベルで活躍している皆さんですが、全国の舞台で戦う際に一番心掛けていることは何ですか?
石田:自分なりの試合に臨むルーティンワークを中3から変えないでいます。元気になるような音楽を聴きながら着替えてストレッチをします。
奈須:試合に臨む際に「これだけ練習したんだから大丈夫」と思えるようになるまで、練習を積み重ねておくということです。
井戸畑:飛び込みは男子の場合1人が6本ずつ飛ぶので、全体の試合時間が何時間にもなります。1本飛んで次に飛ぶまでの時間にいかに集中力を保つかということが大事で、僕は1本飛んだら、それは忘れて次の飛び込みのイメージを作ることに集中します。
酒井:調子が良くない時も目の前の試合を楽しもうと考えるようにしています。
緊張緩和のために「まず観客を見渡す」「完璧なイメージを頭の中に」
ー大きな大会では緊張しますか?緊張を緩和する独自の対策があれば教えてください。またメンタルの強さを鍛えるためにしていることはありますか?
酒井:試合前の移動時に車の中でプロの素晴らしい試合の動画を見るようにして、自分の中に良いイメージを作るようにして緊張をほぐします。たとえ練習試合でも常に大きな試合を想定して無駄なミスをしないように心掛けることでメンタルを鍛えます。
石田:ラグビー場に入ったらまず観客を見るようにしています。そうすると「こんなところで試合ができるのは限られた人間だけだ」と思えて楽しくなってきて、緊張しません。ユースオリンピックでも敵チームの応援団から大きなブーイングを受けることもありましたが、「これを黙らせたら凄い」と考えました。
奈須:あんまり緊張しないタイプですが、友達と会話することが一番緊張を和らげます。常に「良い泳ぎを」と意識していると硬くなることはありません。
井戸畑:飛び込みはイメージトレーニングが特に大事です。頭の中でずっと同じことを繰り返します。そのイメージが完璧に近付いてきたら、そこで止めて体を動かします。直前の練習でミスをした時は本番の時に足が震えることもあります。1本飛ぶごとに得点や順位が変わるので緊張しやすい競技です。
ーそれぞれに理想とする選手がいたら教えてください。その理由も教えてください。
井戸畑:英国のトーマス・デーリー選手*2です。2012年のロンドン五輪で10m高飛び込み個人で銅メダルを取った選手です。飛び込みは中国選手が強いですが、彼らの多くが細い体形です。それに比べてデーリーは筋肉質で、水しぶきがあがりやすい体形なのに技術で水しぶきをあげず、中国選手にも勝てるところです。
酒井:男子バレーボールのポーランド代表、ミハウ・クビアク選手*3です。現在日本のVリーグでパナソニックの選手として活躍しています。スパイクもレシーブも上手く、トスも上げられ、どこのポジションもできる万能選手というところにあこがれます。プレーだけでなく、試合中に自分のことよりチームメートのために審判に抗議する姿を見ても凄いなと思います。
石田:ラグビー南アフリカ代表のチェスリン・コルビ選手*4です。僕のように小柄ですが、7人制でも15人制でもトップランクの選手 で、小さくても通用することを証明してくれました。
奈須:入江陵介選手*5です。背泳ぎの泳ぎがとてもきれいです。大柄な外国人選手に負けないくらいに大きな泳ぎができるのも凄いと思います。
手を抜かず、納得でき、自分なりの練習を
ー部活の日々の練習で自分なりの工夫はありますか?
奈須:あえて自分より速いクロールの選手と一緒に泳いで1本でも勝とうと練習しています。
石田:ラグビーはチームスポーツですが、嫌なことをチームの中で率先してやることを心掛けています。それでチームの雰囲気を良くしたいと思います。
酒井:得意ではないレシーブの練習では、基本は3本で交替することが多いのですが、納得できないと3本でやめず、3本きっちりできるまで続けるようにしています。
井戸畑:練習で1本1本飛ぶたびにコーチから指示や注意があり、その通りに練習することも大事ですが、そのうえで自分なりの工夫をするようにしています。上手い選手の動画を見て、自分がまねできる部分を取り入れて試したりします。それが自分に合えば続け、合わなければ別のことを試します。
ー2020年の東京五輪が迫っていますが、将来五輪代表になったらどんな活躍をしたいですか?家族や学校など周囲の期待を意識しますか?
井戸畑:五輪の飛び込みで日本はメダルを取ったことがないので、やはり何色でもいいのでメダルを取りたいです。友達や周囲から「メダルを取ってくれよ」と言われると期待されているんだと意識します。
奈須:金メダルが目標です。ただ水泳部顧問の梶山先生からは「調子に乗ったら結果が出ないタイプなので、謙虚に行け」と言われているので、それを肝に銘じています。
石田:10月のユースオリンピックでは銅メダルを取れましたが、五輪ではそれを金にしたいです。大きくて手足も長い外国人選手と戦ってみて壁を感じましたが、今は逆にそれをいかに突破するかが楽しみになってきました。
酒井:東京五輪の時は17歳でまだ早いかもしれませんが、最近日本の男子バレーは五輪から遠ざかっているので、まず五輪に出られるようになることが目標です。そのためにも世界に通用する選手になりたいです。

次に目指すのは五輪のメダル
ー当面の目標を教えてください。
石田:3年間の集大成として、花園の全国高校ラグビーで優勝することです。
奈須:高校2年で、インターハイで優勝できましたが、3年でも絶対優勝してインターハイ連覇することです。
井戸畑:来年は高校の最終年で、インターハイ、国体、ジュニアオリンピックの3冠を狙います。
酒井:年末のJOCジュニアオリンピックカップで優勝することです。

石田 吉平

奈須 一樹

井戸畑 和馬

酒井 優英
*1:「JOCジュニアオリンピックカップ」と称して開催されている。各都道府県内の中学生選手で選抜チームを作る。大会の目的の一つとして、将来のオリンピック選手の発掘があげられる。毎年12月下旬から4日間、エディオンアリーナ大阪(大阪府立体育会館)などで開催される。
*2:1994年生まれ。10m高飛び込みを専門。2009年に国際水泳連盟10m高飛び込みの部門で世界ランキング1位に。
*3:1988年生まれ。ポジションはウィングスパイカー。ポーランド代表。
*4:1993年生まれ。仏クラブに所属。172㎝。ポジションのWTB(ウイング・スリークォーターバック)は、ラインの最も大外でパスをもらい、ライン際を駆け抜けてトライする花形。
*5:1990年生まれ。2012年ロンドン五輪200m背泳ぎと400mメドレーリレーで銀メダル。100m背泳ぎで銅メダル。背泳ぎ100mと200mの日本記録保持者。