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井上 剛 准教授
いのうえ・つよし 1998年静岡大学大学院理工学研究科電気電子工学専攻修士課程修了。2014年京都大学大学院工学研究科機械理工学専攻博士課程修了。パナソニック先端技術研究所主幹研究員、奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科客員教授などを経て、2018年大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部システムデザイン工学科特任准教授。2020年から現職。博士(工学)。三重県出身。
両手を使って作業をしている途中に説明書が必要になったら、一旦手を止め、説明書をめくらなくてはいけません。でもそれが、かけているメガネに次々と欲しい情報が表示されたら――。そんな世界を実現する技術の研究に、井上准教授は取り組んでいます。キーワードは「ヒューマンセンシング」。人の筋肉の動きなど生体信号を感知して機器の制御につなげる研究です。
航空機の整備や工場での部品組み立てなど、両手がふさがる作業現場。指示書やマニュアルを手に持ちながら仕事をすると、どうしても効率が落ちます。井上准教授は安全用保護具や光学機器開発に定評のあるメーカー・山本光学(大阪府東大阪市)と共同で、視線計測機能付きスマートグラスを開発し、課題解決に挑戦しています。
試作したスマートグラスには、ホログラム導光板ディスプレイを搭載し、この透過画面に映し出される画像などを確認しながら作業ができるようにしています。また、眼球を撮影するカメラも搭載し、一定範囲の場所を見たときに表示情報を切り替えるシステムを開発しました。表示切り替えのために手を止めてスイッチを押すなどの操作が不要なので、次の手順にスムーズに進め、作業効率もアップします。
この便利さを多くの人に体験してほしいと思い、ルービックキューブを使ったデモシステムを構築しました。混ぜたルービックキューブの色の配置情報から計算された作業(解法)手順がスマートグラスに映し出されます。作業を行い、再びスマートグラスを見ると次の操作を示してくれます。指示通り動かしていくと簡単に色がそろうのです。2021年11月にあべのハルカス(大阪市阿倍野区)で実演展示した「ハルカス学園祭」では、小学生から大人まで多くの入場者が試着してルービックキューブにトライ。「あっという間にそろった」と感嘆の声が上がりました。
他にも、生体電位センサ、加速度センサを備えたウェアラブル機器も開発しています。グローブ型ウェアラブル端末は、手袋に、筋肉の収縮に伴って発生する微弱な電気信号を感知する生体電位計測機器と、腕の動きを認識する加速度センサを搭載しています。「より自然な人の動きから機器を制御できるよう、更に研究を重ねたい」と井上准教授は話します。グローブは、例えば組み立て工程におけるネジ締め作業において、単なる作業の完了判定だけではなく、「締め過ぎ」「締め足りない」などを含めた認識を目指しています。「将来、伝統工芸の名人レベルの繊細な技術も、筋電でデータ化したい」と語り、貴重な匠の技を継承する新たなツールとして期待が広がります。スマートグラスも、「障害を持つ人の支援や宅配の届け先を画面でガイドするなど幅広く社会で役に立つものにしたいですね」。ヒューマンセンシングには、私たちの未来を変えていく可能性が広がっています。
スマートグラスの詳細が分かる動画はこちら
https://youtu.be/osKBE0Luw08




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