吉川 雅博准教授

大阪工業大学 ロボティクス&デザイン工学部 システムデザイン工学科

電動義手の常識を超えた機能性と低コストの「Finch」開発

研究最前線

FLOW No.80

吉川 雅博 准教授
Profile

吉川 雅博 准教授

よしかわ・まさひろ 2010年筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士課程修了。産業技術総合研究所特別研究員、奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科助教などを経て、2016年大阪工業大学工学部ロボット工学科特任准教授、2017年から現職。博士(情報学)。北海道出身。

研究室の奥の机の上には大小のドライバー、カッター、ペンチなどの工具が所狭しと並んでいます。「子供のころから模型作りが好きで細かな作業は全く苦になりません」と笑う吉川准教授。ものづくり好きが「人の役に立ちたい」という思いと結び付き、新しい発想の福祉機器を次々と生み出しています。

電動義手の常識を覆す対向3指の「Finch」の開発の背景には、既存の筋電義手が150万円以上と高価で、重さも900g以上という使いにくさから、国内で推定約1万人の前腕欠損者の85%が把持機能のない装飾 義手を選ぶという現実がありました。「Finchは“2本目の義手”というコンセプトで、あえて外観を手に似せることをせず、物をつかむ道具としての機能性を優先した結果が対向3指でした」。3Dプリンターなどの活用で 開発時間やコストを圧縮、価格は既存の電動義手の10分の1の15万円を実現。330gと軽量なのに500gの物をつかんで運べ、指に内蔵したトーションバネでこれまでより細かな作業も可能です。左右兼用でレディメイドの5サイズ、調整用サポーターでほとんどの体格に合わせられる簡単装着、直接肌に触れない筋隆起センサで操作も容易と、さまざまな工夫が詰まった優れものです。2016年に販売開始されると「超モノづくり部品大賞健康・バイオ・医療機器部品賞」を受賞するなど高い評価を受けました。

吉川准教授がものづくりで重視するのはユーザー視点。Finch開発では協力病院に1年で40回以上足を運び、試着してもらった患者の“ダメ出し”でどんどん改善しました。現在取り組む子供用Finch開発ではユーザーの障害児らがいる東大病院に学生を連れて行きます。「ユーザーに会うと手抜きができなくなります」。学生指導でのぶれない方針でもあります。Finchの使用者はまだ多くはありませんが、平昌パラリンピックのメダリストが使ってくれるなど、徐々に社会に浸透しています。

高校の美術の教科書にも紹介されたFinch
高校の美術の教科書にも紹介されたFinch
リアルな義手のRehand(左手) も開発
リアルな義手のRehand(左手) も開発

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