吉川 孝次准教授

広島国際大学 保健医療学部 救急救命学科

大災害の頻発と多様化に対応するため
求められる救急救命の標準化と人材育成

研究最前線

FLOW No.114

吉川 孝次 准教授
Profile

吉川 孝次 准教授

きっかわ・こうじ 1986年広島工業大学工学部建築学科卒。同年広島市消防局入局。1994年広島市救急救命士養成所修了。2019年広島国際大学保健医療学部医療技術学科准教授。2021年同大学院医療・福祉科学研究科医療工学専攻博士前期課程修了。2020年から現職。広島県出身。

吉川准教授が広島国際大で研究者の道に進んだのは、広島市消防局で33年間勤務する中で救急救命の現場における既存の処置の問題点を解決したいという思いからでした。「頸椎を保護しながら気道を確保する方法を研究し、より多くの外傷救急現場で傷病者の命を救うため改善策を提案してきました」。災害時の対策や多数の傷病者への対応が、自治体、消防本部ごとに細部で異なり、全国的に標準化されていない問題にも取り組んでいます。対応が標準化されれば広域的な災害対応が可能となり、被害軽減や救命につながります。更に災害現場で適切に指揮を執る人材の育成や組織作りの提案も進めています。

2014年8月の広島土砂災害では、死者が64人と最も被害の大きかった地区を管轄する安佐南消防署に勤務していました。「数多くの災害現場を経験してきましたが、身近で起こった、見たこともない悲惨な現場で、救助と捜索で1カ月家に帰れませんでした」と振り返ります。それまでの避難計画が地震中心で豪雨・土砂災害などに柔軟に対応しきれていない限界を痛感したと言います。その後、国の避難計画も災害の多様化に対応し見直されていますが、「計画通りにいかないのが災害対応の難しさ」と肝に銘じています。

吉川准教授は、消防、警察や自衛隊などの災害現場の初動要員を対象とした日本災害医学会研修会の「多数傷病者への対応標準化トレーニングコース(MCLS)」の講師も務め、組織間の連携向上を目指しています。また、「危険箇所など地域の情報を日頃から把握し伝えることも救急救命士の大事な仕事」と言い、地元の防災イベントにも学生らと積極的に関わります。地域との「顔の見える関係作り」が防災には不可欠だからです。

傷病者への初期対応を学生に指導する吉川准教授(中央)
傷病者への初期対応を学生に指導する吉川准教授(中央)

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