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小林 秀丈 講師
こばやし・ひでとも 2002年徳島文理大学薬学部衛生薬学科卒。2004年同大学院薬学研究科薬学専攻博士前期課程修了。2007年岡山大学大学院自然科学研究科生体機能科学専攻博士後期課程(現:医歯薬学総合研究科薬学専攻博士後期課程)修了。2006年広島国際大学薬学部薬学科助手。助教を経て2015年から現職。薬剤師。博士(薬学)。大阪府出身。
抗生物質(抗菌薬)の効かない薬剤耐性菌の増加が、G7サミットで取り上げられるなど世界的な課題になっています。細菌学(毒素研究)を専門にする小林講師らのチームは、医療施設の院内感染の代表的な原因菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)について、広島国際大のキャンパスがある呉市内の大規模病院と2017年から協力し、院内で分離(※)された菌の遺伝子解析を実施。院内感染の制御に効果を上げています。
※検体中に存在する特定の菌をつかまえること
がんや糖尿病などと違ってその深刻さがあまり意識されていない薬剤耐性菌による感染症。「今後何も対策を講じなければ、2050年には世界で1000万人が死亡すると推計されています。治療薬が無効になるだけでなく、手術で予防的な抗菌薬を使えなくなると手術そのものができなくなります」と小林講師は話します。中でもペニシリン系の抗生物質であるメチシリンに耐性のあるMRSAは1960年代以降に世界中に拡大しました。MRSAによる主な疾患は、肺炎、菌血症、皮膚・軟部組織感染症、手術創感染症、尿路感染症などです。現在、黄色ブドウ球菌 の50%にメチシリン耐性があり、政府はこれを20%以下に抑えることを目指しています。
小林講師らは呉市内の3病院内で分離されたMRSAの遺伝子型をパルスフィールド電気泳動法(PFGE法)によって解析し、呉市地域で大きく3つのタイプが広がっていることを解明しました。更にその菌がいつ、 どこで分離されたのかという情報と合わせることで、感染源や感染経路を推定し、病院にフィードバックしています。「別々の患者から分離されたMRSAの遺伝子型が同一なら感染源を推定でき、手洗いや消毒の強化などの対策が取りやすくなります」。フィードバックされた情報によって、同じタイプのMRSAが同じ病棟から出ることがなくなるなどの効果が出ています。また、pvlという白血球破壊毒素を産生するMRSAが高病原性株として脅威になっており、遺伝子型の違いでMRSAが産生する毒素も異なります。だからこそ「広がっているMRSAに関する情報は、医師が使う治療薬の選択にも重要」と小林講師は強調します。
一方、小林講師は、食中毒原因菌のエロモナス属菌が腸管から深部へ侵入する際に、セリンプロテアーゼ(APS)という毒素がかかわっていることを突き止めるなど細菌毒素研究でも大きな成果を上げています。「毒素は場合によっては薬にもなるというのが面白い」と毒素研究の魅力を語る小林講師。こうした基礎研究とMRSAの遺伝子解析のような応用研究を両輪に感染症に立ち向かっています。



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