新見 泰之さん

国土交通省 四国地方整備局小松島港湾・空港整備事務所長

将来を見据える広い視野で
人流・物流・防災のインフラを支える

Graduate Voice 活躍する卒業生

FLOW No.94

Profile
にいみ・やすゆき 1986年大阪工業大学工学部土木工学科(現:都市デザイン工学科)卒。1987年同大学院土木工学専攻修士課程退学。同年運輸省第三港湾建設局(現:国土交通省近畿・中国・四国地方整備局)に入庁。東京の本省勤務や徳島県鳴門市など自治体への出向経験もあり、これまでの異動は10回を優に超える。小松島港湾・空港整備事務所へは4度目の配属。徳島県出身。

かつては「四国の東の玄関」として知られた徳島県の港町、小松島市。海からほど近いところから徳島県内の港や空港の整備を担う大阪工大土木工学科(現:都市デザイン工学科)卒業生の新見泰之さん。港も空港も、国内そして世界へと人、物の流れを中継する重要なインフラ。仕事について語る姿からは誇りと熱意が伝わります。






「99.6%」。事務所紹介のパンフレットの表紙に、この数字が大書されています。島国の日本では輸出入貨物の総量の実に99.6%が港を通ります。行き来する品は、食料や衣料、車や精密機器などの工業製品、石油やガスなどのエネルギーなど多種多様。港は、我々の日常生活と切っても切れないものです。

入庁以来、ほぼずっと港湾に携わってきた新見さんは「全体を考えるのが面白い。地図に残る、規模の大きな仕事です」とその魅力を語ります。岸壁や防波堤を造るには、複雑に打ち寄せる波を計算する必要があります。そうした土木の専門的な技術の一方、他地域へとつながる施設ですから、ニーズなどをネットワークの中で考えることも不可欠。10年、20年先の将来を見渡して施設の必要性を判断していかねばなりません。港湾整備で培われた技術は空港整備にも生かされ、更に東日本大震災以降は、岸壁の耐震化など「人の命を守る」防災の視点も一層大事になっています。



新見さんは徳島県出身ですが、父親の転勤に伴って小学校高学年まで愛媛県で、中・高時代は高知県で過ごしました。民間でトンネル工事を多く手掛けていた父親の姿や、他に土木関係の職に就いていた親類を見て、「自然と土木、建築を進路に選ぶようになった」といいます。進学したのが、当時から厳しい教育で知られていた大阪工大でした。

「大都会」と驚いた大阪での暮らしは、トイレは共同、風呂は銭湯という6畳一間の下宿が拠点。大学からの課題が多く、大学と下宿を往復する日々だったそうですが、構造力学の研究室で、熱心な先生の指導の下、必死に卒業研究に打ち込んだ記憶が残ります。

ある時、大学の勉強について、先生に「就職したら役に立つんですか」と尋ねたことがありました。すると、「大学でみんなと一生懸命考えて研究すること自体に意味があるんや」と一喝されたそう。優秀な友人たちに助けてもらったという新見さんは「大学を出てどんな道に進んでも必ず問題点は出てくる。みんなでよく考えれば解決へのアイデアは出てくるもの。学生時代に仲間と悩んだ経験が役に立つのです」と話します。

港を直接使うのは荷役や船舶関連の企業、フェリーを利用する人だったりしますが、整備に向けては地元の自治体や周辺で操業する漁業者などとの調整も必要です。新見さんは「社会に出ると、いろんな人とコミュニケーションが取れる能力も大切」とも指摘します。当初から港湾の仕事に就こうと思って大学へ進んだわけではありませんでしたが、結果として広い世界へと飛び出していく最初のステージになりました。

2020年4月から務める所長職。約40人もの職員を束ねる重責も背負いますが、「自分がこうしたい、という思いを、優秀な職員がバックアップしてくれ、毎日が楽しい」と笑顔を見せます。「港があるから日本の生活が成り立っているとの自負がある。そんな世界があることを知ってほしいですね」。社会を縁の下で支え続けます。

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