前田昌則さん

大阪市此花区長

民間企業から行政への挑戦
ラスト・ランを区民の笑顔で飾りたい

Graduate Voice 活躍する卒業生

FLOW No.83

Profile
まえだ・まさのり
1983年大阪工業大学工学部建築学科卒。1985年同大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。同年ナショナル住宅産業入社。2007年パナソニック ホームズ不動産設立を担当し、同社で営業企画部部長を務める。2016年此花区長に就任。趣味の空手は4段の腕前。大阪府出身。

2016年4月、大阪市の公募で選ばれて此花区長に就任した前田昌則さんは、大阪工大と同大学院で建築を学んだ住宅設計や不動産の専門家です。長年培った民間企業でのキャリアにピリオドを打ち、区長として行政に挑戦することを決意したのは、「人に喜んでもらうために仕事をする」という信念の総決算としてキャリアの最後を飾ろうという思いからでした。

「建築の勉強は実物を見ないと始まらない」という指導教員の方針もあって、大学時代は授業のかたわら、日本中を旅して数多くの建物を見て回ったという前田さん。大学名の入った名刺を見せると行く先々で大人たちが驚くほど親切にしてくれ、学生を見守る世間の目の温かさを感じたと言います。大学院を修了後、松下幸之助の経営理念に共感してナショナル住宅産業(現:パナソニック ホームズ)に就職した前田さんは、設計部門で集合住宅の商品開発などを担当。大学での学びを生かせる憧れの仕事で順調にキャリアを築いていきましたが、入社して20年目に転機が訪れました。新会社の設立を任され、右も左も分からない不動産の世界に飛び込むことになったのです。「1年生」としてのスタートを助けてくれたのは、学生時代と同じく、周囲の人々の人情でした。不動産業は同業者同士の横のつながりが強い業界で、「ずぶの素人」だった前田さんに、ライバル会社のベテランたちが仕事のイロハを教えてくれたのです。「世間に優しくしてもらった経験があったから、民間から行政へという大きな挑戦にも踏み切れました」と振り返ります。

勇気を出して踏み出しさえすれば道は開けるという自信を得た前田さんは、不動産事業を手掛けるようになって10年目、大阪市が区長を公募していることを知り、すぐに「これだ」とひらめきました。「区民が夢を持って暮らせるまちづくりを通して、人生のラスト・ランを飾れれば」という思いで応募し、見事選ばれて此花区長に就任。周囲は驚きましたが、実は24歳で入社した当時から「30年間精一杯やり切ったら会社を辞め、その後の10年で新しいことに挑戦しよう」と決めていたという前田さんにとっては、まさに計画通りの転身でした。

大阪工大の学生・院生らが提案したまちづくりプロジェクトの模型を前に

いつも周りの人に支えられ、人生設計を実現させてきた前田さんが一貫して大切にしているのは、誰かに喜んでもらうために仕事をするということ。「そこに官民の違いはありません」という言葉どおり、150人近くの区職員とともに区民の声に耳を傾け、人々の笑顔のために何ができるかを探る毎日です。住人の憩いの場となる正蓮寺川公園の整備など、就任前から思い描いていたまちづくりの計画も着々と進行中で、同プロジェクトには大阪工大建築学科の学生と大学院生も協力しています。次の世代を担う後輩たちに学生らしい柔軟な発想を期待しているという前田さんは、「世の中が温かく育ててくれるのが学生の特権。社会との接点を持って自由闊達に学び、自分で考えて行動できる人間になってください」とアドバイスを送ります。

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