植田 文一さん

ロイヤルホテル 代表取締役社長

嫌な仕事でも与えられたら成果を やり始めたら最後まで責任を持つ

Graduate Voice 活躍する卒業生

FLOW No.108

Profile
うえだ・ふみかず 1985年大阪工業大学高校(現:常翔学園高校)卒。同年、京都グランドホテル(現:ロイヤルホテル)入社。リーガロイヤルホテル(大阪)副総支配人、ロイヤルホテル人事部長などを経て、2017年から取締役に就任。2023年6月から現職。大阪府出身。

「大阪の迎賓館」と称され賓客を90年近く迎え入れてきたリーガロイヤルホテル(大阪市北区)をはじめ、国内外に13のホテルを運営する「ロイヤルホテル」の社長を務める植田文一さんは大阪工大高(現:常翔学園高)の卒業生です。高校卒業後、同社に就職しホテルマンとしてキャリアを重ね、昨年6月に56歳で同社トップに就任しました。






懐かしいのは学校の食堂



植田さんが大阪工大高について懐かしく思い出すのは食堂です。サッカー部でハードな練習をこなしていたので食欲旺盛でした。昼食は毎日2回。2時間目が終わると「かっちゅうライス」(トンカツの乗ったラーメンと白ごはん)、4時間目後は定食を食べました。好物だった白身魚フライのバーガーとフルーツ牛乳のセットは数量限定販売だったので、授業が終わるや食堂に駆け込んで確保していました。

高卒での就職を決めたのは、早く自立したかったからです。学校に届いた求人からロイヤルホテルを見つけ、立派な雰囲気に憧れて応募しました。初任地は京都グランドホテル(現:リーガロイヤルホテル京都)のレストランでした。

1984年度のマラソン大会で1位になった植田さん(記録部分の画像一部修正)





自費で通ったソムリエの学校



ウエーターとして働く中、ワインに興味を抱くようになりました。分厚いリストがあり、驚くほど種類もそろっているのに、日本にワイン文化が本格的に根付いていないことから注文されるものは一部に集中。「味にどんな違いがあるのだろう。勉強してみたい」。ソムリエの資格を取るため仕事をしながら自費で4カ月間、ワインスクールに通いました。24歳で日本ソムリエ協会認定のソムリエ資格、29歳で上位資格のシニアソムリエ(当時)を取得しました。ワインは産地や収穫年、保存や輸送状態によって味が変わり、飲み頃や料理との組み合わせなど学ぶほどに世界が広がります。フランスのブドウ畑やワイン工場を見学する研修旅行にも参加して知識を蓄えました。「ワインに詳しいお客様と、料理に何を合わせるかでお互い譲らず熱い議論をしたものです」

ソムリエの仕事は天職。そう感じていた矢先に法人営業に異動を命じられました。当初は嫌で仕方がありませんでしたが、きっちりしたレスポンスを心掛けるうち営業成績が上がりました。携帯電話にはすぐ出て、質問に即答できない時は折り返しの連絡時間を「10分後」などと具体的に示し、必ず守りました。「信頼につながったのはもちろんですが、時間を決めればお客様本人に直接対応してもらえるので、効率良く仕事ができました」。その後、大阪へ転勤しいくつかの部署を経て人事部長に就任。「自分に務まるのだろうか」と戸惑いましたが、さまざまな現場や職種の人の思いを知ることができ、社長になった今に役立っています。

リーガロイヤルホテル(大阪)は昨年3月、土地と建物をカナダ系不動産投資会社ベントール・グリーンオーク・グループに売却し、運営に特化するようになりました。同年6月には世界100カ国以上で6000以上のホテルを運営するインターコンチネンタルホテルズグループにも加盟。現在、135億円かけて大規模 リノベーションを実施中で、来年4月には「リーガロイヤルホテル大阪ヴィニェットコレクション」としてリブランド開業します。「私どもが90年かけて培ってきたサービス力、技術力、運営力を大切に継承しながら、更にブランド力を高めていきます」

「この仕事で勝負したい」と考えていた20代のソムリエ時代





ホテル業界で働きたい人を増やしたい



リノベーションでは営業スペースに先駆けて、従業員向けの食堂や仮眠室などのリニューアルを実施しました。「従業員の心身の健康がおもてなしの礎となり、サービスの向上につながります。ホテルは楽しくやりがいのある仕事です。ロイヤルホテルが従業員の働きやすい環境を整えることから、広くホテル業界で働きたいと思う人を増やしていきたい」

現在の目標は、ロイヤルホテルが100周年を迎える2035年に「安心のサービスと感動のおもてなしで世界中のお客さまの期待を超える日本最高峰のホテルグループ」を築くことです。ロイヤルホテルのブランドに魅力を感じて運営の依頼が数多く寄せられており、実現に向けて確かな手応えを感じています。

これまでのキャリアを振り返り、「嫌だなと感じた仕事が一番ためになっている」と話す植田さん。「やりたくない仕事でも与えられたら一定の成果が出るまでやってほしい。やり始めた仕事は必ず自分でピリオドを打ってもらいたい。失敗しても、失敗を受け入れて自分で幕を引くまで責任を持つことが大切」。後輩に向けたメッセージを厳しくも温かいまなざしで語ってくれました。

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