高橋 光臣さん

俳優

「悔しかったら一流になれ!」師の言葉を胸に生き方を模索

Graduate Voice 活躍する卒業生

FLOW No.108

Profile
たかはし・みつおみ 2000年啓光学園高校(現:常翔啓光学園高校)卒。2004年東洋大学法学部法律学科卒。主な出演作品に『轟轟戦隊ボウケンジャー』『科捜研の女』『梅ちゃん先生』『神谷玄次郎捕物控』シリーズ『ノーサイド・ゲーム』『光る君へ』『大岡越前』など多数。大阪府出身。

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数多くのドラマや映画に出演し、更に活躍の場を広げる俳優の高橋光臣さんは、啓光学園高(現:常翔啓光学園高)の卒業生です。高校、大学時代はラグビー一筋でしたが、大学卒業後は一転、俳優の道へ飛び込みました。そこにはラグビーを通して学んだ経験や教えがあったと言います。








ラグビーに没頭した高校生活

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幼少期からさまざまなスポーツに取り組んできた高橋さんがラグビーと出会ったのは中学2年の時。地元の公立中学に創部されたばかりのラグビー部に誘われたのがきっかけでした。進学先にラグビー強豪校の中から啓光学園高を選んだのは、校名に名前の「光」の字が入っていたから。「キラキラした感じがした」と笑います。

当時の啓光のラグビー部は名将、記虎敏和監督の下、全国制覇を目標に100人超の部員が切磋琢磨していました。周りは「化け物のような」体格のラガーマンばかり。入学して、すぐ「自分はやっていけるのか」と不安になりました。午後6時に全体練習が終わった後も、居残り練習をするのは当たり前。競争が激しく「毎日が勝負、エキサイティングだった」と振り返ります。

高校2年の時に啓光は全国高校ラグビー大会で2度目の全国制覇を達成。3年になった高橋さんは自分も会場である花園ラグビー場の芝を踏みたいと夢見ます。同じフランカーの選手がケガをすると、1軍に上げてもらえましたが、その選手が復帰するとまた2軍へ。「ラッキーで上がっても、実力が伴わないとそこにいることはできない」。その経験はその後の生き方のベースになったと言います。

結局、全国高校ラグビー大会は、右手甲の骨折で大会直前にリザーブ(ベンチスタートの選手)の登録メンバーから外され、スタンドで応援。チームは初戦でまさかの逆転負けを喫します。考えもしなかった事態に、グラウンドから引き揚げた後も現実を受け止めきれずに笑っている選手がいました。その時、監督が「悔しかったら一流になれ!」と一喝。その言葉が心に深く刻まれました。





「ラスト サムライ」きっかけに俳優目指す



東洋大でもラグビーを続けましたが、卒業後は親の仕事を継ごうと漠然と考えていました。そんな頃、2人の後輩を相次いで失います。啓光時代の1学年下の後輩、そして東洋大の2学年下の後輩。「自分も明日死ぬかもしれない。やりたいことは本当にこれなのか?」と、自分の人生を見つめ直したと言います。

そんな時に見た映画が「ラスト サムライ」。映画はほとんど見たことがなかった高橋さんですが、特に渡辺謙さんの演技に鳥肌が立ちました。「自分の純粋な感情を大事にしてみよう」。俳優という仕事は考えたこともありませんでしたが、すぐに芸能事務所に応募していました。

30歳で出演したNHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」で注目され、2年後には「神谷玄次郎捕物控」(NHK)で念願の時代劇に初主演します。アクションを生かした「ハードボイルドな男の作品」に出演したい。そんな思いがどんどん強くなっていきました。

高橋さんのInstagramにアップされている常翔啓光学園中高の山田長正校長とのツーショット写真





監督の教え胸に演じたラガーマン役



2019年に放送されたドラマ「ノーサイド・ゲーム」(TBS)では、ラグビーチームの主将、岸和田徹役で出演。役柄とはいえ、本格的なラグビーシーンを撮るために集められた元日本代表クラスのラガーマンたちをどうやって引っ張っていくか悩みました。そんな時に思い出したのは「普段の生活態度が全てプレーに出る」という高校時代の監督の教え。現場では、エキストラにまで目を配り、一人一人に声をかけるよう心掛けました。

「チームのみんなに目立ってほしい」。プレーの場面では、自身は一歩引き、他の出演者を前面に押し出していました。最終回では、そんな高橋さん演じる岸和田のトライシーンを監督の指示で撮ることに。「ガチンコでいこう」とトップスピードで走り込んだところ、相手のタックルで首を痛めましたが、「いいシーンが撮れた」と周りにも喜ばれました。「劇中の涙はみんなリアルに泣いています。それくらい全員の思いが詰まった作品。二度とできない世界かもしれません」





誰にも負けない得意を磨く



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38歳から本格的に武道を学んでいます。「誰にも負けない得意なものを確立しないと勝負できない」という強い思いからです。道場に通い始めた時、素振りを「1万回やってみろ」と言われ、多少疑問を感じつつも、コロナ禍で時間もあったため、取り組みました。結果、やる前とやった後で「レベルが違う」ことに気付かされました。

「ただやればいいという問題ではないですが、数をこなすことが重要と気付かされました。勉強でも、仕事でも、あらゆることに通じるヒントがそこにはあると思います」。後輩に自身の経験から得た熱いメッセージを語ってくれました。

写真提供:スターダストプロモーション

活躍する卒業生