千々和 未悠さん、松崎 光紗さん

広島国際大学 看護学科2年

青木 水理さん

日本おひるねアート協会 代表理事

思い出写真は赤ちゃんとの共同作業
育児に悩むママに元気を届ける

FLOW No.87

「おひるねアート」を知っていますか。「赤ちゃんに背景や小物をつけて撮影する、赤ちゃんと一緒に作るアート写真」のことです。常翔学園の設置学校に在籍する学生、生徒、教職員が各界の“一流人”と語り合う「クロストーク」の第4回は、「日本おひるねアート協会」代表理事の青木水理さんがお相手。広島国際大看護学科2年で、親子の交流イベントなどを企画・運営するLCFプロジェクト=※= に携わる千々和未悠さんと松崎光紗さんが、「子供が泣かずにいい写真を撮るためのコツは?」「親にイベントを楽んでもらうには?」などと活動へのアドバイスを求めましたが、青木さんの答えは少し意外なものでした。

この楽しさを全国へ!

千々和、松崎:はじめまして。今日はよろしくお願いします。まず、日本おひるねアート協会を設立したきっかけを教えてください。

青木:私は子供の写真を撮るのが趣味で、面白い撮り方がないかとインターネットで検索してヒントを得て、長男のおひるねアートを2012年の夏から撮り始めたんです。1日1枚をブログにアップしていくうちに、メディアで紹介されるようになり、2013年3月には写真集の出版が決まりました。企業からも仕事の依頼が来るようになり、社会の需要が大きいことを知りました。「この楽しさを全国に広げていきたい」と、その半年後に協会を立ち上げました。

松崎:背景がとてもかわいい作品ばかりです。どんな材料を使っているのですか。

青木:もともと、おうちの中にある身近なものを活用するというコンセプトでやっています。たとえば紙おむつ。立てるとカモメが飛んでいるような形になるし、並べると文字がつくれます。

松崎:協会ではどのような活動をしているのでしょうか。

青木:「認定講師」を育成することと、おひるねアートを楽しみたいお客様に向けて撮影会を提供しています。認定講師は全国に約500人います。0~2歳ぐらいのお子さんを持つ家庭とつながりを持ちたい企業に、撮影会の提供や講師の紹介もします。フォトスタジオも1カ所、東京で運営しています。

泣き顔も大切な思い出

千々和:私たちLCFプロジェクトでも子育て支援の活動をしています。おひるねアートのような撮影会もしますが、赤ちゃんが泣いたりしてなかなかうまくいきません。撮影中に注意することはありますか。

青木:親が子供に「ごろんしてもらおう」「言うことを聞かせよう」とすると、子供は雰囲気を察するんです。大人がリラックスして全力で遊ぼうとすることで、子供たちが「ごろんすると楽しいことが待ってるかも」と思える。イベントでは親も緊張するので、リラックスできる環境づくりが必要です。

千々和:うまく撮影するにはどんな工夫が必要ですか。

青木:肌がきれいに撮れるよう、自然光が確保できる会場を選んでいます。赤ちゃんのその日のありのままの表情を残すということを心掛け決して笑顔を強要せず、ママたちには最初に「今日はどんなお顔で撮れるか楽しみですね!」と声を掛けます。泣いているのに寝転ばせて、自分のエゴで撮影したという「罪悪感」を持ってほしくないし、もちろんエゴじゃない。主催側がポジティブな声掛けをすることで、「かわいい思い出の写真が撮れた」「次も行きたい」と感じてもらえます。

キラキラするわが子が見たい

松崎:私たちのイベントの中心は子供ですが、親も一緒に楽しんでもらいたいと考えています。どんな工夫が必要でしょうか。

青木:「ママとパパも楽しめるように」というのは意識しなくていいのかな、と感じます。私も親子でイベントに参加しますが、キラキラした顔で何かに一生懸命打ち込み、笑顔になるわが子を見るだけで「来てよかった」と思えるんです。手形を取るなど、思い出に残る品、持ち帰れるものがあると、満足度が高まると思います。

千々和:親子向けのイベントを開くにあたり、大切だと考えていることは何ですか。

青木:ママが今どんなことに悩んでいるのか、子供たちが興味を持っているものは何か、テレビやネットで情報をリサーチすることが大事だと思います。今なら(環境大臣の)小泉進次郎さんの男性による育児休暇が話題で、「うちのパパは育休を取るのか」「どのくらい家事をしてくれるのか」といったやりとりが盛んです。私たちは、パパの育児参加に特化したイベントもやろうと考えています。

パパとママの子育てを普通に!

千々和:今まで活動してきて大変だったことは何でしょうか。

青木:国が子育て支援に充てるお金の額が少ないと感じています。おひるねアート撮影会も子育てイベントだから費用は抑えてほしいという依頼が時々あります。子供を持つことがリスクとして捉えられるような世間の声もあり、私たちがいくら「子育ては楽しい」と発信しても、ネガティブな話をする大きな声にかき消されてしまうことですね。

松崎:では、うれしかったことは何ですか。

青木:楽しいという気持ちから活動していたのですが、「産後うつ」から脱出できたというママからの反響を多くいただきました。妊産婦の死因の1位が自殺だというニュースがあります。「赤ちゃんと外出するきっかけになった」「子供との時間を楽しめるようになった」と、前向きな気持ちになれるママが1人でも増えればうれしいです。

千々和:最後に、これからの目標を教えてください。

青木:2019年の出生数が100万人を大きく下回り、約86万人に なるというニュースはショックでした。私たちはおひるねアートというコンテンツを通じて、子育ての楽しさを伝えていきたい、パパが子育てを楽しめるような環境をつくり、パパとママが協力して育児することが世間のスタンダードになるようにしたい。子供がいるから何かをあきらめるのではなく、「できることが増える」というイメージをつくり出す努力を続けていきます。

千々和、松崎:いろいろと教えていただきありがとうございました。

<インタビューを終えて>

千々和さん:社会のさまざまな面に目を向けて幅広く活動されていることに驚きました。私たちも視野を広げ、情報を集めて、何ができるのかを考えていこうと思います。

松崎さん:LCFが7月に開く七夕会に向けて、役立ちそうなアドバイスがたくさんありました。家の中にある身近なものを使った遊びや、パパも楽しめるようなイベントづくりをしたいです。



※『LCF(Let's have fun with Children & Families)』プロジェクト呉市すこやか子育て支援センターを活動の場として、親子の交流を深めることを柱にイベントを企画・運営する看護学部生の団体で、クリスマス会などで赤ちゃんの写真の撮影会を実施している。

青木さんの次女の明里ちゃん。
Profile
あおき・みのり 2007年生まれの長女、12年生まれの長男、19年生まれの次女の3児の母で、長男誕生後に趣味でおひるねアートを撮り始め、13年10月に日本おひるねアート協会を設立。「おひるねアートで世界中のママと赤ちゃんに笑顔を届けること」を目指す。子連れ出勤を実践し、「赤ちゃんと一緒に働ける」環境を提案。写真集「赤ちゃんのおひるねアート」(主婦の友社)、「おひるねアート」(宝島社)のほか、協会の公式本「おひるねアート撮影術」(小学館)が出版されている。日本テレビ「24時間テレビ」「ヒルナンデス」などメディアにも多数出演。

クロストーク