中学生のころから小惑星探査機「はやぶさ」に魅せられた北折さんは、「宇宙にかかわる仕事がしたい」という夢に大きく近づいています。航空宇宙分野の事業を手掛ける中菱エンジニアリング(名古屋市)に技術者として内定したのです。
「中学の理科の授業で見た『はやぶさ』が地球に帰還する映像とその物語のかっこよさにはまりました」と語ります。それを機に、はやぶさのプロジェクトマネージャだった宇宙航空研究開 発機構(JAXA)の川口淳一郎氏らの講演会に何度も参加する「はやぶさ女子」に。「次第に宇宙科学などの知識が身についていきました」と当時を振り返ります。高校生のころには、宇宙関連の仕事に就けたらいいなと意識し始めました。しかし、入学した大阪工大環境工学科で学ぶのは宇宙とは直接は縁がなさそうな分野でした。夢をあきらめかけた北折さんの転機となったのが、2年次の学科を問わず履修できるPBL科目「宇宙・地球・生命-探究演習」でした。「火星移住計画」をテーマに6人でチームを組み、「火星に先遣隊が到着してから10年、30人で火星で完全自給生活を行う」という課題に挑戦しました。「誰よりも宇宙に詳しい自信があった」北折さんですが、難しい課題に悪戦苦闘。なんとか書籍やインターネットを駆使して情報収集し、生きていくために最も重要な水の確保に焦点を絞り、国際宇宙ステーション(ISS)で実際に運用されている「水再生システム」の導入を提案。チームリーダーとして発表に漕ぎつけました。
この履修をきっかけに、学科では学べない宇宙工学に必要な流体力学や材料力学、工学系のシステム言語なども独学。時には所属する洋弓部にいる機械工学科や情報科学部などの友人に教えを請うこともありました。また、指導教員の松本政秀教授からは「環境工学科のカリキュラムにある数値解析などは宇宙関係にも生かせる」との貴重なアドバイスをもらいました。そうした努力と周囲の支援があっての内定でした。「将来はロケットエンジンの数値解析の仕事が希望です。一番大きな夢は自分がかかわったロケットの発射を見届けること」と話す北折さん。夢をあきらめず努力を続けた宇宙への思いがキラリ光っています。