常翔学園高校2年

大山実久さん、パトワ・ジュル信玄さん

摂南大学 理工学部 電気電子工学科(※4月から電気電子情報工学科に名称変更)

楢橋 祥一 教授

Q. なぜ大勢が同時にスマホを使っても干渉せずにつながるの?
A. 電波の「使う時間・周波数・識別方法」を利用者ごとに分けて使うからです。

FLOW No.114

3大学2中高を設置する本学園のスケールメリットを生かして、高校生が大学の先生から学ぶ「教えて先生」。今回は、常翔学園高2年の大山実久さんとパトワ・ ジュル信玄さんが、摂南大電気電子工学科の楢橋祥一教授にスマートフォン(スマホ)のつながる仕組みを教わりました。

待ち受け中でも基地局とやり取り

楢橋:私の専門は無線通信工学で、研究室では基地局の信号増幅装置の技術開発に取り組んでいます。この装置は、基地局から送信する前の信号を整え、必要な強さにして電波として遠くまで届くようにする役割を担います。さて、今日はスマホのつながる仕組みについてお話しします。例えば、九州にいる人が北海道にいる人にスマホで電話をする場合、九州から北海道に電波が届くわけではありません。九州の基地局でスマホの電波は信号として受信され、その内容が光ファイバーなどの有線ネットワークを通って交換機へ送られます。いくつかの交換機を中継した後、北海道の基地局から改めて電波として送信され、相手のスマホにつながります(図1)

大山:相手のいる場所が分からなくてもつながるのは不思議です。

楢橋:スマホは待ち受け中でも、どの基地局のエリアにいるかが分かるよう、必要最小限の信号を基地局とやり取りしています。電話を掛けると、通信事業者のネットワークがその情報を使って、相手の近くの基地局につながるため、相手の場所を知らなくても通話ができます。

パトワ:移動しながら話しても、途切れないのはなぜですか?

楢橋:それは、「ハンドオーバ」という技術があるからです。スマホを持っている人が移動すると、スマホの通信が近くの基地局へ自動的に切り替わるため、途切れません。

大山:移動時につながりにくくなることがあります。

楢橋:基地局から出る電波は、直接スマホに届くものもあれば、建物などの障害物にぶつかって反射したり、回り込んだりして届くものもあります。このように複数の電波が到来する現象を「マルチパス」といいます。これらの電波が互いに干渉して強め合ったり打ち消し合ったりするため、受信状態が大きく変動し、場所によってはつながりにくくなるのです(図2、3)

大山:スマホはマルチパスへの対策もしているのですか?

楢橋:はい。影響を減らすために、いくつかの工夫をしています。例えば、半波長程度離した2本の受信アンテナを使って、瞬間ごとに受信レベルが高いアンテナに切り替えて接続しています。この技術を「ダイバーシティ」といいます。

パトワ:通話時に相手との会話に時間差を感じないのはなぜですか?

楢橋:通話の送受信にかかる時間は、4Gではおよそ数十ミリ秒と、非常に短いからです。5Gでは、より低い遅延を実現できるように設計されています。声はマイクで電気信号になり、更にデジタル信号(0と1の並び)に変えられます。そして、小さな「パケット」に分けて次々と送られるため、時間差をほとんど感じないのです。パケットとは、必要な情報を少しずつに分け、宛先などの情報をつけて送るための単位です。分けて送ることで、多くの人が同時にネットワークを効率よく使えます。パケットは決められたルールに従って次々と送られ、混んでいる所は待たされながら、別々の経路を通って進みます。

パトワ:基地局は全国にどのくらいありますか?

楢橋:携帯大手のNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社で、全国にそれぞれ約30~40万カ所(※)を設置しています。基地局は高い建物の上に見つかります。摂南大にもあります(写真)
 携帯電話では、基地局の電波が届く範囲を「セル(cell=細胞)」という小さな区域に分けて通信を行います。この仕組みから、携帯電話は英語で「cellular phone」と呼ばれています。

総務省「令和7年度携帯電話及び全国BWA等に係る電波の利用状況調査の調査結果の概要」によると、基地局の数はNTTドコモ43万8371カ所、au30万8027カ所、ソフトバンク28万7927カ所(2025年3月末現在)

海上を飛行時は人工衛星介し通信

パトワ:同じセルの中で複数の人が同時に通話しても干渉し合わないのはなぜですか?

楢橋:スマホは、電波の「使う時間・周波数・識別方法」を利用者ごとに分けて使う「多元接続」という技術を使い、干渉しないようにしています。例えば、4Gで使われている多元接続では、電波の「使う時間」と「周波数」を細かく区切ります。短い時間×狭い周波数のマス目に分け、基地局が利用者を割り当てることで、多くの人が同時に通信できます。瞬間ごとに利用者が使う枠を切り替えることで、連続した通信が可能になっています(図4)。5Gでは、4Gで使われている多元接続の考え方を発展させ、より多くの利用者や多様な通信に対応しています。

大山:修学旅行でハワイに行った時、飛行機の中でWi-Fi サービスを使えたことに驚きました。空の上までどのように電波を届けているのでしょうか?

楢橋:飛行機の外側にはアンテナが付いていて、機内のWi-Fi 装置が外部と通信しています。陸の上を飛ぶ時には地上の基地局と、海の上を飛ぶ時には人工衛星と通信しています。

大山:気軽に使っているスマホには、たくさんの技術が使われていることが分かりました。

パトワ:多くの人の努力の積み重ねがあるのだろうと感じます。

楢橋:日本で最初に登場した移動通信サービスは、1979年に始まった自動車電話です。これはアナログ方式の第1世代(1G)にあたり、その後は約10年ごとに新たな技術が登場し、通信速度や容量が向上してきました。2026年3月末には3Gサービスが終了し、3G対応のいわゆるガラケーが使えなくなるという、無線通信にとって歴史的な節目を迎えます。現在は4Gと5Gの時代となり、技術の進化は華やかに見えますが、その裏には数々の試行錯誤があることに思いをはせてもらいたいと思います。

(写真)摂南大寝屋川キャンパス11号館の屋上に設置されたKDDIの基地局。別の場所にNTTドコモやソフトバンクの基地局もある
Profile

楢橋 祥一(ならはし・しょういち)教授

摂南大学 理工学部 電気電子工学科(※4月から電気電子情報工学科に名称変更)

ならはし・しょういち 1986年熊本大学工学部電気工学科卒。1988年同大学院工学研究科電子工学専攻修士課程修了。2008年北海道大学大学院情報科学研究科メディアネットワーク専攻博士後期課程修了。NTT移動通信網(現:NTTドコモ)でワイヤレス研究所や先進技術研究所の主幹研究員などを務め、2017年から現職。博士(工学)。熊本県出身。

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