3大学2中高を設置する本学園のスケールメリットを生かして、高校生が大学の先生から学ぶ「教えて先生」。今回は、常翔啓光学園高で陸上部に所属する1年生、上原梨花さんと橋爪翔さんが、広島国際大医療栄養学科の中村亜紀教授に運動と食事の関係について教わりました。
体力や筋力を向上させる夕方の運動
中村:広島国際大で栄養学を教えています。私の主な研究は、いつ、何を食べると健康に良いかという「時間栄養学」と、アスリートの競技力向上をサポートする食事についてです。今日は、運動部で体を鍛える高校生がどんな食べ物をどのように食べるとよいか、一緒に考えていきましょう。2人は陸上部でどんな競技をしていますか?
上原:走り幅跳びです。
橋爪:100m走とやり投げです。
中村:どちらも瞬発力が必要になる競技ですね。練習は放課後ですか?
上原:月曜日から土曜日まで、放課後に1時間半活動しています。
中村:ヒトの体温は午後3時ごろに最も高くなり、運動能力・酸素消費量・肺活量のいずれも夕方がピークになります。血液中の成長ホルモンも、朝より夕方に運動する方が大きく増えるので、夕方の運動は体力や筋力を向上させます(グラフ1)。
橋爪:運動する時間で違いがあるのですね。
中村:そうなんです。ところで、練習後の夕食は何時ごろに食べますか?
上原:練習が午後6時まであり、夕食は7時半くらいです。
橋爪:私も同じくらいです。
中村:運動後は、できるだけ早く食事を摂りましょう。筋肉にはエネルギー源となるグリコーゲンが貯蔵されていますが、運動により消費され、不足した状態が長引くと疲労から回復するまで時間がかかります。直後にエネルギー補給をすることでグリコーゲンや筋タンパク質を効率よく増やすことができます。運動後の食事は、30分から1時間以内が「ゴールデンタイム」と呼ばれるほどです。時間が経過してから食べると、筋肉より脂肪がつきやすくなります(グラフ2)。
橋爪:帰宅するまでに1時間ほどかかってしまいます。
中村:練習後に軽食を食べることはできますか? 鮭やツナのおにぎりや肉まんなど、軽く食べられるものを用意しておくといいですよ。炭水化物(糖質)だけよりも、炭水化物(糖質)とたんぱく質の組み合わせがグリコーゲンの回復や筋タンパク質の合成に効果的です(グラフ3)。
筋トレに効果あるたんぱく質はサプリメントより食事から
橋爪:やり投げで肩を痛めることがあります。けがを防ぐために筋肉を増やしたいのですが、どんな食べ物がいいですか?
中村:特別な何かに頼るより、バランスの良い食事から栄養を摂ることが大事です。基本は「5つのお皿」で、①主食②主菜③副菜④乳製品⑤果物の組み合わせです。
上原:たんぱく質の摂取にプロテインがいいと聞いたことがあります。
中村:高校生はよほどの運動量でない限り、食事のたんぱく質で十分だと思います。たんぱく質は摂り過ぎると体脂肪として蓄積することもあります。また、たんぱく質は、サプリメントより食事から摂取した方が、筋力トレーニングに効果が出るというデータもあります(グラフ4)。そして、一度にたくさん摂るより、3食均等に食べる方が効果的です。朝ごはんにもぜひ、たんぱく質を摂り入れましょう。普段は何を食べていますか?
上原:私は、食パンとヨーグルトを食べています。
橋爪:卵かけごはんとみそ汁です。
中村:2人ともたんぱく質は摂っていますが、ゆで卵や納豆、魚肉ソーセージなどを 追加することも手軽に食べられる食材としてお薦めです。野菜も食べてください。時間がなければ野菜ジュースで代用する方法もあります。
橋爪:肉や魚で体に良い・悪いはありますか?
中村:いろんな肉や魚を食べるといいですね。ダイエットなどで鶏肉のささ身や胸肉が注目されますが、高校生には豚肉のもも肉や、鉄分を補給できる牛肉の赤身も良いです。魚も良質の脂質を摂取できるので積極的に食べてください。
上原:もうすぐ試合があります。食事で気を付けるべきことがあれば教えてください。
中村:1週間前から、白米の量を少し増やしてエネルギーを蓄えましょう。試合当日のお弁当は、白米3、肉や魚1、野菜2という割合にします。消化に時間がかかるため、肉や魚の揚げ物は避けましょう。更に、ビタミンを補給するために果物も持参するとベストです。
上原:果物は梨が好きです。
橋爪:キウイが好物ですが、黄色と緑で違いはありますか?
中村:栄養価的には黄色が優れています。ビタミンCが豊富で、ビタミンEも含まれています。果物は甘いものより、酸味のあるものが疲労回復に効果的です。
橋爪:運動に良い食事について、知らないことがたくさんありました。
上原:食べるものにもっと意識を向けていきたいと感じました。
中村:最後に、レンジで簡単にできる栄養たっぷりのスープを紹介します。食べ物でしっかり体を作って、記録を伸ばしてくださいね。


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