- Profile
- ふくおか・たつゆき 2000年大阪産業大学経営学部経営学科卒。2002年名古屋文化学園医療福祉専門学校言語聴覚科卒。2014年兵庫医療大学大学院医療科学研究科人間活動科学分野摂食嚥下リハビリテーション学修了。2018年兵庫医科大学大学院医学研究科医科学専攻博士課程修了。兵庫医科大学病院などを経て、2016年広島国際大学総合リハビリテーション学部リハビリテーション学科准教授。2025年から現職。博士(医学)。広島県出身。
①自身の歯の数が19本以下②半年前と比べて固いものが食べにくくなった③お茶や汁物等でむせることがある④口の渇きが気になる⑤普段の会話で言葉をはっきり発音できないことがある(Oral frailty5-item Checklist : OF-5)。
オーラルフレイルになると、そしゃくや嚥下がしづらくなります。食べ物をうまく摂取できなくなり、身体機能の低下や要介護状態につながります。「いつまでも自分の口で食べたい」と、歯のケアを重視している人は多いと思います。しかし、どんなにたくさんの強い歯を持っていたとしても、舌が正常に機能しなければ食物を摂取することはできません。舌は筋肉のかたまりで、ねじれたり上下左右に動きながら、食物を動かしたりまとめたり、のどの奥に送り込んだりしています。
老化とともに衰える舌の機能について、維持することの大切さは分かっていても、具体的にどのように対処すればいいのかという研究は、実はあまり進んでいません。私たちの研究室では、オーラルフレイルの予防に向けて、舌の機能の評価やトレーニング法について調べています。その一つとして、地域の高齢者を対象に舌とあごの筋力トレーニングを実施し、オーラルフレイル予防に有効だという可能性を見いだしました。
協力者は平均年齢75.8歳の男女61人。2グループに分け、片方に「口腔体操」、もう片方に「舌とあごの筋力トレーニング」に取り組んでもらいました。口腔体操は、首周りの筋肉をほぐしたり口を大きく開けたりする運動を1日15分、週3回実施。筋力トレーニングは、訓練用の用具を使って舌を上あごに強く押し付ける運動と、直径約10cm のゴムボールを下あごと鎖骨の間に挟んで強く押しつぶす運動で、それぞれを5秒間×10回、1日30回、週3回実施してもらいました。8週間後に変化を比較したところ、口腔体操では舌やあごの筋肉に変化がみられなかったのに対して、筋力トレーニングは舌圧(舌を上あごに押し付ける力)や開口力(大きく口を開ける力)が有意にアップし、嚥下に大きく関係する 「オトガイ舌骨筋」の筋量増加も確認できました。
この研究を更に発展させ、増えた筋量を維持するにはどの程度の負荷をどのくらい継続すればよいのか、どの年代からトレーニングをすることが効果的なのか、なども調べていきたいと考えています。いつまでも自分の口でおいしく食べ、健康に過ごすことに役立つ研究を通じて、社会に貢献していきたいと思います。
研究のきっかけは「救いたい」気持ち
エコーを用いて嚥下筋の筋量を測定する福岡教授
大学時代に福岡教授は言語聴覚士という国家資格ができることを知り、興味を持ちました。卒業後、専門学校に進んで資格を取り、大学病院に就職。難聴の子供に言語指導やリハビリを行うことをイメージしていました。しかし、現場で接したのは、口腔や嚥下の機能が落ちて食べられなくなった高齢患者がほとんどでした。「こんなにも食べることに苦労している人がいるとは」。驚くとともに、「目の前の困っている人をなんとか救いたい。もっと嚥下の知識をつけなければ」と、働く傍ら大学院で学ぶ道を選びました。「研究して解明して発表する。気が付いたら研究にのめりこんでいました」
パーキンソン病患者の舌の動きを解明
口蓋部に取り付けた舌圧センサーシート。5点の感圧部で舌圧最大値や接触時間を計測する
福岡教授の専門テーマの一つが「舌圧センサーシートシステムを用いた嚥下時舌圧に関する研究」です。超薄型の舌圧センサーを口蓋部(口の中の天井)に貼り付け、舌と口蓋が接触する時の舌圧最大値や接触時間、積分値を計測します。パーキンソン病の患者を対象に、嚥下障害の有無と舌の動きの違いについて調べたところ、舌圧の強さに違いはなかったものの、圧をかける時間の長さや高い圧が出るまでの時間に違いがあることが分かりました。動きの特徴の解明により、新たな治療の手掛かりになることが期待されます。
《関連論文》
●Tongue Pressure Measurement and Videofluoroscopic Study of Swall owing in Patients with Parkinson’s Disease(パーキンソン病患者における舌圧測定と嚥下機能の
ビデオ蛍光透視検査)DOI:10.1007/s00455-018-9916-5
●Quantitative evaluation of swallowing function in Parkinson ’s disease using tongue pressure measurement: a mini-review(舌圧測定を用いたパーキンソン病の
嚥下機能の定量的評価:ミニレビュー)DOI:10.3389/fneur.2024.1355627
現場のリアルを伝える授業
研究室の学生が企業と連携して開発した吹き戻しゲーム
学生指導で福岡教授が大切にしているのは「現場のリアルを伝えること」です。今も月に2回、医療機関でリハビリを行っていることから、教育用にと許諾を得て撮影した現場の映像を多数、授業で用いています。学生からは「教科書では理解しづらく感じた内容でも、先生の映像ならすぐにのみ込め、知識として定着する」と好評です。
2024年には、研究室の学生が呼吸や嚥下のトレーニングのできる吹き戻しゲームを企業と連携して開発。社会とつながることを意識した教育を展開しています。
現場のリアルを感じる授業を大切にしている福岡教授(左から2人目)



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