布山 尚伸さん

立花エレテック代表取締役社長

半導体への興味から始まった会社員生活
想定外の海外駐在27年を経て社長就任

Graduate Voice 活躍する卒業生

FLOW No.99

Profile
ぬのやま・ひさのぶ 1980年大阪工業大学高校(現:常翔学園高校)卒。1984年大阪工業大学工学部電子工学科(現:電子情報システム工学科)卒。同年、立花商会(現:立花エレテック)入社。海外駐在の業務を長きにわたり務め、2010年執行役員、取締役常務執行役員を経て、2022年から現職。

2021年9月に創業100周年を迎えた技術商社「立花エレテック」(本社・大阪市西区)の代表取締役社長、布山尚伸さんは大阪工大電子工学科(現:電子情報システム工学科)の卒業生です。授業で学んだ半導体の「これからの成長」を見込んで選んだ会社でした。社内で歩んだ道は想定外でしたが、入社面接で口にした「会社を大きくしたい」との抱負を着実に実現しています。






布山さんは大阪生まれの大阪育ち。1984年に大学を卒業した後、前身の「立花商会」に入社し、半導体本部に配属されました。半導体はテレビや洗濯機、冷蔵庫など数多くの電化製品に使われます。大学で半導体工学の授業を受け「将来を見れば、電気や機械より面白そう」と考えたのが志望動機でした。同社は大阪に本社を置き、大阪工大OBも多く在籍。当時は未上場だったことにも魅力を感じました。

ところが、入社半年で運命が変わります。上司に「これからは海外でも半導体を売る」と海外本部へ異動を命じられ、翌年にはシンガポール行きが決まりました。1985年のプラザ合意による円高・ドル安に伴い、各企業が海外進出を始めた時期でしたが、周囲からは「もう左遷か」と冷やかされたといいます。「シンガポールという国も知らず、ジャングルのイメージでした。でも行ってみると高速道路がきれいで治安もいい。頑張ってみようと思いました」。不得意な英語を使って、現地でスタッフを雇い、合弁会社をつくるなど苦労を重ねました。いったん大阪に戻り、今度は1995年から2016年まで21年間、香港駐在員事務所長を務めました。

1988年シンガポール 取引先とパーティーにて(前列中央が布山社長)



その後も海外拠点を増やし続け、今では香港、シンガポール、マレーシア、上海などに子会社7社、中国に5支店・営業所を抱えるまでに成長。布山さんの海外生活は通算27年に及びます。「想定外でしたが、妻と2人の娘が一緒に行ってくれましたから」。家族の存在が大きな支えになったようです。

香港から帰国後、2022年6月末の社長就任まで6年間は東京に勤務し、大阪に戻ったのは約28年ぶり。「前任の社長の功績を継承する一方、更に仕事の効率化を図り、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めたい。DXは海外の方が進んでいますから」。社の運営に、海外経験で得た知見も生かすつもりです。

コロナ禍で世界的に半導体不足が続く中、同社は2021年度、主力のFAシステム、それに次ぐ半導体部門とも大きく売上を伸ばしました。売上は連結決算で1934億円と過去最高に。現在、従業員約850人のうち技術者が210人と4分の1を占め、仕入れた商品に技術的な手を加えてお客様が求めるものを提供することができるのが強みで、「技術商社」を掲げるゆえんです。

大学で広く学んだ電気や機械の知識が、取引先などとの会話のきっかけになる場面も多く経験してきました。入社面接をする立場となり、学生が「答えを丸暗記しているようだ」と感じることもあるそうです。そして今、大学生たちにエールを送ります。「私の場合、大学で半導体工学って何、と興味を持ったのが始まりでした。やらされる勉強でなく、自己啓発の気持ちで勉強すれば、将来必ず役に立つと思います」

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