学園広報誌「FLOW」:東京五輪 x 「Team常翔」

全日本選手権で優勝8回テコンドー日本代表の経験を
次代の五輪選手らの指導に生かす

韓国で発祥し1950年代から日本でも普及し始めたテコンドーは、今や世界競技人口は7000万人とも言われ、柔道や空手をしのぐまでに発展したオリンピックの正式種目です。全日本選手権で8回優勝し15年間も日本代表の地位を保持し続けた山下博行さんは、常翔学園職員として摂南大に勤務しながら大阪工大テコンドー部監督(公認5段)として母校の道場で指導。全日本テコンドー協会の強化委員会副委員長や日本オリンピック委員会(JOC)強化スタッフなどの重責も担っています。

PROFILE
摂南大学 薬学部事務室長 リオ五輪テコンドー競技アジア大陸予選大会全日本コーチ  
山下 博行
 さん

1992年大阪工業大学高等学校(現常翔学園高等学校)卒。1996年大阪工業大学土木工学科卒。1989年から2003年までテコンドー日本代表選手。この間に全日本選手権優勝8回。1994年広島アジア大会銀メダル。2000年から母校のテコンドー部監督。2009年日本オリンピック委員会(JOC)第25回ユニバーシアード夏期大会日本代表選手団テコンドー競技監督、2016年リオ五輪テコンドー競技アジア大陸予選大会全日本コーチなど、全日本テコンドー協会の役員(コーチ)としてさまざまな海外大会の日本代表選手団に帯同。国技院公認5段。大学卒業後、学校法人大阪工大摂南大学(現常翔学園)事務職員に。2015年から現職。大阪府出身。

テコンドーとの出会いはいつごろで、何が魅力ですか?

山下

実は小さいころはネフローゼで体が弱かったのです。それが回復してからも心配した両親が体を鍛えた方がいいと考えて、3歳上の兄・博将(1992年バルセロナ大会日本代表選手)と一緒に、知り合いが師範をしていたテコンドー道場に通わせたのが始まりです。小学3年でしたが、テコンドーの特徴である華麗な足技や蹴り、技のコンビネーションの多彩さにすぐに魅了されました。兄が一緒だったこともあり、2人で競い合うように強くなっていきました。

小学6年で全日本少年少女の大会で3位になると、中学3年では大人に交じって全日本選手権の最軽量クラスで優勝しました。15歳での優勝はいまだに男子最年少記録のようです。高校1年から15年間、日本代表選手としてさまざまな海外の大会に出場しました。

プレッシャーの違う海外試合 満員の客席に人気競技を実感

広島アジア大会(1994年)銀メダルをはじめ国際大会でも数多くのメダルを取られていますね。国内の大会と海外の大会の違いは何ですか?

広島アジア大会決勝での山下さん(左)広島アジア大会決勝での山下さん(左)

山下

母国の国旗を背負って戦う海外の試合は、プレッシャーが全く違います。海外の選手の中には生活が掛かっている選手も多く、その真剣さはすごいです。日本と違ってメダルを取ると一生の生活が保障される国もあるからです。昔戦った相手で今ではその国の国会議員になっている人も何人か知っています。

また海外ではテコンドーの人気の高さを実感します。施設があまり要らない競技で貧しい国でも力を入れやすいことから、競技人口が7000万人もいます。韓国だけで盛んというイメージは昔のことで、今は世界競技なのです。オリンピック種目になったことも大きいですが、どこの大会も客席は超満員です。4月にフィリピンであったリオデジャネイロ大会のアジア大陸予選では、チケット代が米ドルで80ドルと高額なのに客席は満員でした。ヨーロッパでも子供はサッカーをやるかテコンドーをやるかで悩むほど人気です。オリンピックの開会式の旗手をテコンドーの選手が務める国も多いですよ。

日本選手団の監督やコーチを長くされていますが、どんな指導を心掛けているのか教えてください。

山下

「強い選手が勝つのではなく、勝つ選手が強い」とよく言います。相手が強くてもその強さを出させない戦い方があります。また武道でもありますから当然、礼儀や礼節を重視し、サポートしてくれる家族や仲間への感謝を忘れないように指導しています。4月のアジア大陸予選中には熊本地震がありましたが、そんな中で試合できる感謝の気持ちを持ち、少しでも被災者の励みになるよう頑張ろうと言いました。

全日本の指導者として強化策の悩みはありますか?

山下

指導者たちが別に仕事を持ちながらの指導なので時間がままならない悩みは大きいですね。大きな大会前でも選手につきっきりで指導できないのです。仕事と後進育成の間でジレンマを抱えます。JOC専任コーチ制度を活用している競技団体などは、ほぼ年中合宿をするなどして効果を上げていますが、テコンドーはそこまでできていないのが実情です。私は代表合宿の指導であっても、業務繁忙時なら土日の休みを利用して東京へ行くしかありません。少しでも指導の時間を増やすために代表選手らに大阪に来てもらって合宿することもあります。

またこれまで国際大会には、少人数で結果を残すことを重視して有力な階級に絞って派遣してきましたが、それでは選手の国際大会経験が不足してしまいます。東京オリンピックを控えて選手のそうした経験を増やすためにも、できるだけ多くの階級で派遣できないかと提案しています。国際大会の経験なくしていきなり大きな大会で勝つことは難しいと考えるからです。私は高校1年で初めて世界選手権大会に派遣されましたが、会場では揺れるような歓声に驚きました。そんな経験をこれから多くの若い選手にしてもらいたいです。

指導する濱田真由選手はリオのメダルが有力

リオや東京大会で期待する有望選手はいますか?

リオ大会でメダルを期待される濱田選手(右)と師弟ツーショットリオ大会でメダルを期待される濱田選手(右)と師弟ツーショット

山下

女子57㌔級の濱田真由選手がリオに出ます。まだ22歳の素朴で謙虚な女の子ですが、天才肌でかつ努力家の選手で昨年の世界選手権で優勝しました。1年ほど前から日本代表合宿の際に指導していますが、日々成長を続けており、リオではメダルが有力です。体が柔らかく足も長く得点の高い上段蹴りを得意とします。男子では大学4年で先月のアジア大陸予選であと一歩の3位だった58㌔級の鈴木セルヒオ選手に期待しています。ただ東京大会までには4年もあり、どんな素晴らしい選手が出てくるか予想はできません。今活躍している日本代表選手のすべてが4年前から第一線で活躍していたかと言われればそんなことはないからです。

同じ大阪出身の選手でもある岡本依子選手がシドニー大会(2000年)で銅メダルを取った時は日本中が大きく盛り上がりました。リオや東京でもメダルを取って、テコンドーが更に広まっていくことで、いい循環を作りたいですね。

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