学園広報誌「FLOW」ニューウェーブ

美しい方程式が

予想外の世界像を
生み続ける魅力

大阪工業大学 情報科学部情報システム学科   真貝 寿明   教授

真貝 寿明 教授:大阪工業大学 情報科学部情報システム学科

PROFILE
1995年早稲田大学大学院理工学研究科博士課程修了。アメリカ・ペンシルバニア州立大学客員研究員、理化学研究所基礎科学特別研究員などを経て、2006年大阪工業大学情報科学部助教授に。2012年4月から現職。研究室は宇宙物理・数理科学研究室。2013年から同大学国際交流センター長も務める。大学生向けの数学書や「図解雑学 タイムマシンと時空の科学」(ナツメ社)、「日常の『なぜ』に答える物理学」(森北出版)など著書多数。子どもや市民向けの科学工作教室や移動プラネタリウム解説など積極的なボランティア活動も。博士(理学)。東京都出身。

アインシュタインの一般相対性理論誕生100年

1915年11月25日、アルベルト・アインシュタイン(1879年~1955年)が一般相対性理論の論文を発表しました。それから100年。相対性理論から生み出された「ゆがんだ時空」「ブラックホール」「膨張する宇宙」などは一般人には難解なものの代表格のように受け取られがちですが、現代の宇宙物理学では中心的な存在であるばかりか、GPSへの応用例など日々の生活でも欠かせない存在です。9月に光文社新書「ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開」を出版した大阪工大情報システム学科の真貝寿明教授に、その底知れぬ魅力を聞きました。

特別に美しい重力場の方程式

相対性理論は「時間の進み方が観測者によって異なる」とか「重力の正体は空間がゆがむこと」など、私たちの日常生活をあまりにも超越した結論を導きます。実験検証もできない理論で、発表されて50年近くは学界からも「数学のお遊びだ」として、あまり見向きもされませんでした。

理論物理学者は数学を使って自然や宇宙を正しく表そうとしますが、結果的に美しい式になることが多いです。なかでもアインシュタインの一般相対性理論を表す重力場の方程式は特別に美しいものだと思います。それは多分自然が美しいからでしょう。これは私の研究の原動力になっています。

このたった一つの方程式からアインシュタイン自身も予想しなかった壮大な展開が生まれました。新著に合わせてブラックホール、膨張宇宙、重力波のテーマごとに、これまでに分かったことと今後の課題などをお話しします。

誰も見たことがないブラックホール

ブラックホールは重力が強力で、周囲の天体をも飲み込み、そこから光すら脱出することのできない重い天体です。星が燃え尽きた最期の姿の一つと理解されています。ドイツの天文学者シュヴァルツシルトが、アインシュタイン方程式を最も簡単な条件で解いた結果がブラックホールでした。もっとも、現実にこんな天体が存在することをアインシュタインは知らずに亡くなりました。

現在では30以上のブラックホール「候補」が知られていて、私たちの銀河系の中心にも太陽の400万倍以上の質量をもつ超巨大なブラックホールが存在していることが確実です。しかし、周囲の星の運動や吸い込まれていくガスから放射される電磁波などの状況証拠による推測であり、直接観測されたことはありません。

今後、電波望遠鏡の解像度が大幅に上がれば直接撮影できるかもしれませんし、ブラックホールが形成される瞬間に放出される特徴的な重力波を捕らえることができればその存在を確認したことになるとされているので、私は大いに期待しています。

今のところは理論的な存在ですが、時空の2つの点をつなげるワームホールも方程式の解として出てきます。入ったら出られない一方通行のブラックホールと違い、双方向に抜けられるもので、リンゴの虫食い穴のように宇宙空間を瞬間移動できるかもしれません。私はそれを人間が本当に通過できるのか、数値シミュレーションしましたが、結論は「人間はつぶれてしまう。ただし負のエネルギーを使えれば通過できる」でした。こんなシミュレーションをした研究者は初めてで、学界でも話題になり、世界で何人かが追試の計算をして「正しい」ことを再確認しています。

加速する宇宙の膨張 なぜか分からない

真貝教授の著書の一部

真貝教授の著書の一部

宇宙はビッグバンと呼ばれる大爆発により138億年前に誕生しました。一般相対性理論から宇宙空間そのものが膨張や収縮をすることが導かれます。アインシュタインは「宇宙は不変」と信じていたので方程式を修正しようとしましたが、天文学者ハッブルが観測で「遠くの銀河ほど我々から遠ざかっている」ことを発見したため、膨張宇宙を認めざるを得なくなりました。今から15年ほど前に、宇宙膨張はアインシュタイン方程式が予想する膨張よりも加速していることが分かりました。ただなぜ加速しているのか、いまだに説明がついていません。有力な説として、①正体不明のダーク・エネルギー関与説②相対性理論に不備があるとする修正重力理論説③地球が宇宙の中で特別な位置にあるという非一様宇宙説があります。

どれも決定的なものはなく、将来の観測で否定されるものもあるでしょう。私も含めて物理学者の誰もが、もっとうまく説明できる4番目のアイデアがないか、といつも考えているのです。

見つければノーベル賞確実の重力波

重力波は最もホットなテーマです。物体が運動すると時空のゆがみが変化し、その変化が光速でさざ波のように伝わるのが重力波です。アインシュタインが予言してから100年経ちますが、まだ見つかっていない「最後の宿題」です。

重力波は中性子星やブラックホールの合体などで生じますが、とてつもなく弱い波のためこれまで直接観測されたことはありません。それを観測するための巨大なレーザー干渉計が今、日本と欧米で稼働を始めようとしています。既に10年前より10倍遠くまで観測でき、空間にすると1000倍の領域を捕らえられるまでになっています。いつ発見されてもおかしくない段階に来ており、最初に発見したグループはノーベル賞確実です。

日本が岐阜県飛騨市に設置している、一辺3kmのレーザー干渉計「KAGRA(かぐら)」は来年3月に試験運転を始めます。私もそのデータ解析グループのメンバーで、観測データからノイズにまみれた重力波の波形をどうやって取り出すか、そのための波形のシミュレーションや、重力波のデータが蓄積したことを想定して銀河系中心の巨大ブラックホールの成り立ちが分かるのでは、といった研究もしています。

アインシュタインの理論は100年経った今もこうして多くの科学者たちを魅了し続けているのです。

大阪工大で「一般相対性理論誕生100年記念展 ー光と宇宙と相対性理論ー」

鳥居准教授(右)からの解説を聞く見学者

鳥居准教授(右)からの解説を聞く見学者

真貝教授と同じく相対性理論を専門とする大阪工大一般教育科の鳥居隆准教授(宇宙物理学)らの企画による「一般相対性理論誕生100年記念展ー光と宇宙と相対性理論ー」が、大宮キャンパス図書館ロビーで11月9日~14日まで開かれました(枚方キャンパスは同24日~28日開催)。記念展の準備には工学部2年~4年の学生12人が参加。「その人アインシュタイン」「光」「相対性理論」「宇宙」の4つのテーマごとのグループに分かれて勉強会を重ね解説パネルを作製しました。パネルとともに干渉計などの実験装置やニュートリノ観測に使われたことで知られる浜松ホトニクスの光電子増倍管のほか、アインシュタインの肉声が聞ける動画、アインシュタインと記念撮影気分が味わえる等身大パネルなどが展示。一般にも公開されました。

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