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巻頭特集 活躍する卒業生

FLOW No.116

片岡の功績をたどり、大学教育について語り合った=大阪市内のホテルで

特別鼎談 片岡安 生誕150年常翔学園に息づく片岡イズム

山口 明夫
日本IBM会長、経済同友会代表幹事
西村 泰志
学校法人常翔学園前理事長
井上 晋
大阪工業大学学長

 今年は常翔学園の起源である関西工学専修学校の初代校長・理事長片岡安の生誕150年です。その節目の年に、大阪工大OBの山口明夫・日本IBM会長が経済同友会代表幹事に就任されました。エンジニアから最先端企業のトップになった山口代表幹事は、経済界のリーダーとしてテクノロジー活用の共助成長社会を提唱。その姿は建築家・都市計画家で経済人でもあった片岡と重なります。AI(人工知能)で大きく変わる大学教育ですが、人に寄り添う技術の大切さは変わりません。山口代表幹事と西村泰志前理事長、井上晋大阪工大学長の3人に、片岡の功績をたどりながら、ものづくりや実学の大切さ、テクノロジーによる社会課題解決、大学教育の役割などを語り合ってもらいました。(進行は宮崎泰宏・毎日新聞社大阪経済部長)

Profile
やまぐち・あきお  1987年大阪工業大学工学部経営工学科卒。同年日本IBM入社。エンジニアとしてシステム開発・保守担当後、経営企画、米国IBM役員補佐、サービス事業担当などを歴任。2019年5月社長、2026年8月から現職、米国本社の経営執行委員も務める。2022年4月経済同友会副代表幹事。同年10月大阪工業大学客員教授。2026年1月経済同友会代表幹事。和歌山県出身。

現場を重視する技術

――1922(大正11)年に片岡らが創設した関西工学専修学校の教育の基本方針は、「世のため、人のため、地域のため、『理論に裏付けられた実践的技術をもち、現場で活躍できる専門職業人の育成』を行う」というものです。まず片岡安とはどのような人物で、常翔学園、大阪工業大学にとってどのような存在でしょうか。

西村:建築家として辰野金吾と共同で大阪に建築事務所を開設し、大阪市中央公会堂(実施設計)や奈良ホテル、芦屋仏教会館などの多くの名建築を残しました。都市計画家としては、日本で初めて都市計画で博士号を取り、初の専門書も出版。都市計画の法整備や都市防災などを早くから訴えました。また、経済界・実業界でも活躍したまさに文理融合のマルチな人でした。現場で通用する技術も重視し、そういう人材を育てようと学園を創設したのです。

井上:「大大阪」が発展しつつあった時に、大阪の都市開発、都市整備で大きな役割を果たし、代表的なものが御堂筋の拡幅工事や景観形成です。経済的に余裕のない学生のために夜学で1年で技術を学べる学校を作りました。

山口:関西工学専修学校を創設するにあたり、何のためかを明確にし、それが技術に裏付けられている点に強い感銘を受けました。学校も企業も、何のために存在するのかがしっかりとあってこそ、成り立つと私は思います。技術についても現場を重視する姿勢がすごいです。その精神が受け継がれた大学で学んだことを、今更ながらうれしく思います。

経済成長の先に共助成長社会を

――片岡は「技術で社会を支える」という意志のもと、近代化を支える技術者養成を目指しました。山口さんはIBMで、先端技術を社会実装し、デジタル変革(DX)を通じた社会問題の解決を推進されています。経済同友会トップとしても、AI戦略、医療・介護改革などテクノロジーを活用した「共助成長社会」の実現を打ち出しています。共助成長社会とはどのような社会ですか。

山口:みんなが幸せを感じるのは、一人一人に自分の居場所が社会の中、企業の中、学校の中、家庭の中にあるということだと思います。更に活躍できる舞台もあること。でも経済成長は、人が居場所を感じて、活躍できる舞台があるための、必要条件ではあっても十分条件ではありません。困っていればお互い助け合い、人のためになることが、人として必要です。共助成長社会とは、成長も目指すけれど、お互いを助ける思いやりを絶対に忘れない社会です。

――具体的に、どんなところで私たちは共助成長社会を感じられるようになるでしょうか。

山口:企業が変革を進め、経済成長で国の財政が豊かになると、社会保障制度なども充実する。このプラスのサイクルを必ず実現しなければいけませんが、取り残される人はいます。今でも子どもの人口は減っているのに、支援が必要な子どもたちは増えています。そこには何らかの問題がある。誰一人取り残さない社会づくりを担うこども食堂などのNPO法人もたくさんあります。そういう団体と同友会や経済界が一緒に活動することも一つの大きな共助です。

AI時代に求められる課題解決力

――先の見通せない不確実性の時代です。AIなどテクノロジーは急速な進展を見せ、社会を本質的に変えつつありますが、人に寄り添うテクノロジーの大切さは変わりません。次世代を育成する大学に求められる役割とは何でしょうか。

山口:私は理系・文系の分類はあまり意味がないなと思います。必要なスキルは文理の枠を超えて常に変わり続けます。例えば、プログラミングでも、プログラム言語が変わるたびに一から学び直しますし、経営者になって経済や金利、マーケットのことを一から学びました。今、私は人生で一番勉強しています。大事なのは学ぶ意欲や、学ぶ楽しさを学生時代に身につけることです。会社に入ってお客様と触れあい、勉強をして成長すると徐々に認めてもらえて、仲間が増えていきました。経営者でも本気で学び、取り組んでいる人には仲間ができます。チームで1つの社会課題を解決することを、学生時代に経験できたらいいですね。

西村:大学の役割は、きちんと技術や知識を教えて、社会課題を解決するためには、それらを活用してどうしたらいいかという考え方も勉強させることで、理系も文系も変わりません。

山口:生成AIの登場でおそらく大学の価値が大きく変わります。いわゆる偏差値を導き出しているのは昔の考え方で、従来の評価軸は大きく変わるだろうと思いますね。これまで会社では、社員に教えることを重視してきました。それは学んだ知識の延長線上に仕事があったからですが、今はもう違います。みんなが新しい課題に直面し、一緒に解決しなければならないのです。これからはそんな社会で力を出せるコミュニケーション能力などに優れた学生を、大学には育ててほしいと思います。

井上:本学では授業形態でプロジェクト系のいわゆるグループワークを増やし、いろんなことに挑戦できる場を提供しています。大学ですからAIを否定しませんが、AIの答えを自分のものとして人に説明できることが大事だと学生に話しています。AIで教育は変わっていくだろうし、変わっていかないといけないと思います。

――未来を担う後輩たちに山口さんは何を伝えますか。

山口:何事も無駄だと思わず、この学部だからとか、自分はこれが専門だからといって、挑戦する範囲を狭めるのだけはやめてほしい。自分が何をやりたいかを考え、ではどうするかを常に考えてほしいです。

鼎談後は大阪工大梅田キャンパスへ。(左から)西村前理事長、山口代表幹事、井上学長=常翔ホールで

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鼎談の詳細は毎日新聞に掲載されました。
記事はこちら
https://mainichi.jp/articles/20260714/k00/00m/020/114000c

写真提供 : 毎日新聞社(片岡安を除く)