- 現場を束ねる大林組所長は大阪工業大学卒業生
- 西村理事長、井上学長、建築学科学生が見学
来年4月に開幕する2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)会場でシンボルとなる環状の木造建築物「大屋根リング(以下、リング)」の北東工区建設を担当する大林組で現場所長を務める内林隆文さんは大阪工大建築学科の卒業生です。リングが8月末につながったことから、先輩の活躍ぶりを間近で体感したいと同学科の寺地洋之教授と大学院生・学部生の計23人が9月12日に現地を訪れ、現場見学や工法の説明を受けました。学園の西村泰志理事長と大阪工大の井上晋学長も同行し、内林さんと同じく同学科卒業生で万博パビリオン建設の現場所長の徳永純一さん、大阪関西万博室課長の植村章浩さんとの5人で万博建設のやりがいや仕事に生きる母校の学びを語り合いました。
リングは幅約30m、高さ約20~22m、内径約615m、周囲は約2㎞と、木造建築物では世界最大級を誇ります。柱と柱の間に木材を水平に貫通させる伝統的な工法「貫接合」を用い、京都・清水寺の舞台を支える柱に似た巨大な格子が連なっています。リングの下は通路として会場の主動線となり、階上の通路「スカイウォーク」からは会場全体はもちろん、瀬戸内海や大阪の街並みも眺めることができます。
リングの建築は2023年6月に始まり、3つの工区に分けてそれぞれ共同企業体(JV)が担当。北東工区を大林組・大鉄工業・TSUCHIYAから成る大林組JVが進めてきました。8月21日に3工区の木造建築部分が1つにつながり、現在はエレベーターやエスカレーターの設置、屋上緑化などの工事が進められています。
見学当日はあいにくゲリラ豪雨に見舞われましたが、幅30mのリングの下は屋根部分が傘となり、集団が広がって歩いても濡れることはありませんでした。階下で柱の構造を見ているうちに小雨になり、スカイウォークに上がってリング全体の形状や建設の進むパビリオンを見渡しました。学生たちは柱を手で触れ、木の香りをかぎ、「木造でこんなに大きな建築物がこの短期間に施工できるのか」などと語り合い、木材の織り成す構成美を楽しんでいました。
見学後は現場近くの大林組ビジタールームで内林さんから建築工法について説明を受けました。大林組JVでは1万本を超える柱や梁の部材を使用。柱材は約50%を四国産のヒノキ、梁材は全て福島県産のスギを使い、福島県浪江町にある工場で集成材に加工するなど、国産材の活用促進や東日本大震災からの復興支援にこだわりました。
貫接合は伝統工法では木栓をくさびとしますが、大林組の施工方法では鋼板とボルトで現代版くさびを開発して、重さや地震動などによる変形に対応できる工夫がなされています。また、通常は現場で柱や梁を下から組み上げていきますが、今回は架橋ユニットを下層と上層に分けて施工。下層ユニットに上層ユニットをクレーンで吊り上げて組み上げる工法を取り、工期の短縮や高所での作業を減らして安全性を確保したことが説明されました。
内林さんは「リングをきっかけに、巨大な建築物に木造を取り入れることが今後のトレンドになると思う。多くの会社が力を合わせて造り上げられたことが喜び」と語っていました。