大好きな自転車のために知財の専門知識を生かす

パナソニック サイクルテック技術管理課   片尾 公治   さん

片尾 公治 さん:パナソニック サイクルテック技術管理課

PROFILE
2009年大阪工業大学知的財産学科卒。早期進学で2011年同大大学院知的財産研究科専門職学位課程修了。同年パナソニックサイクルテックに入社し商品開発グループで知財業務を担当。知的財産管理技能検定2級。大阪府出身。

大阪府柏原市の会社までの25㎞を約1時間かけて自転車通勤しています。大阪工大と同大大学院で知的財産の専門知識を身に付けた片尾公治さんは、パナソニックグループの自転車メーカーで知的財産業務を担当。大学のサイクリング部での経験が仕事に大いに役立っています。何より大好きな自転車に囲まれた生活を満喫しています。

エジソンにあこがれて工業高校に進んだ片尾さんでしたが、やがて理系の勉強に向いてないのではと思い始めました。そんな時、研究所をつくって特許をいくつも取りビジネスにするというシステムもエジソンが考えたもう一つの偉大な“発明”であったと知ったのです。「そうした知的財産の仕組みについて教えてくれる大学が家の近くにあることを知って、すぐに大阪工大に入ることを決めました」

「技術と法律が本当に密接につながっていて、法律が会社の浮沈にかかわる武器になると知的財産学部の授業で教えられ、毎日が新鮮な驚きでした」と話す片尾さんが、大学入学で知財の勉強とともに始めたのがサイクリングでした。「最初は自転車で旅行を楽しめたらいいな、という軽い気持ちでサイクリング部に入部しましたが、実際はツアー班でなく競技班に入りました」。それでも休みには仲間と自転車旅行で遠出をしたり、どんどん自転車の魅力にはまっていきました。

大学院に進み就職活動の時期になると、片尾さんは迷わず自転車メーカーを志望しました。今の会社が求人しているのを知り、最初から「入社したい」と猛アピールを掛けました。「会社説明会の1時間前には行き、社員の人が会場の準備をしていたら『何かお手伝いします』と申し出たり、説明会では一人だけ何回も質問の手を挙げました」と笑いながら振り返ります。その努力が功を奏しました。「説明会の段階で『元気なのがいる。こいつは採ろう』と決めていた」と会社の採用担当者に後から言われたそうです。

現在は会社の知財業務を2人で担当していますが、約1000人を擁するグループ本社の知財部署との連携は欠かせません。新製品の特許出願の業務や他社の先行特許を侵害していないかの調査のほか、特許侵害にならないために設計変更を開発部門にアドバイスしたり、海外メーカーの模倣製品のデザインが自社の意匠権を侵害していたら先方に警告したり、と多岐にわたります。権利侵害の見逃しが大きな額の損害賠償につながることもあるため、神経を使います。今後は業界に参入してくる海外メーカーと渡り合うための技術開発を知財の側からサポートしたいと考えています。

「仕事にサイクリングの経験が生きることも多いですが、主力商品の電動アシスト自転車のモーター部品の特許では理系の知識が必要です。海外からの書類を読むためには英語の力も求められます」。そのために休日も勉強を欠かしません。母校が自宅から近いこともあり、今でも学部の図書館で専門書を借りることも。そこは大学院の2年間、貸出などを行うアルバイトもしていたため、自分の勉強部屋のように大いに活用しています。そうした勉強の成果は、国家試験の知的財産管理技能検定2級をはじめ、TOEICで815点、英検準1級などの形で表れています。

社会人になってからの方がよく勉強しているという片尾さんは、知的財産を学ぶ後輩たちに「知財は工業技術と密接にかかわっています。その点、鳥人間プロジェクトなど技術の例がすぐそばで見られる大阪工大は素晴らしい環境です。法律一辺倒ではなく、理系の勉強もしっかりやってください。同じキャンパス内の工学部の学生ともどんどん付き合ってください。知財の勉強に絶対に役立つはずです」と経験に裏付けられたアドバイスをくれました。

週1回は会社の自転車仲間と近くの生駒山の峠越えをしたり、土日には自宅近くの淀川の堤防を走ったりします。また月1回は競技会にも参加するなど自転車生活を満喫する片尾さんですが、「実は小学5年まで補助輪がないと自転車に乗れなくて、自転車は私の劣等感のシンボルだったのです。人生って分かりませんね」としみじみ打ち明けてくれました。

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