館長あいさつ

未来を正しく見つめるために ~館長挨拶~

matsuura.jpg テクノロジーの最前線にいる人と、その人を支える多くの人々は、何を見ているのでしょうか。「未来を見ている」というと、ちょっと格好良すぎるでしょうか。未来は現在の前方に、そして、過去は現在の後方にあるように感じられます。この感覚は多くの人と共有できるように思いますが、いかがでしょう。少しだけ過去を振り返ってみます。
 常翔学園の歴史は、1922年に関西工学専修学校が開校した時に遡ります。建学の精神すなわち「世のため、人のため、地域のために、理論に裏付けられた実践的技術をもち、現場で活躍できる専門職業人の育成を行う」は、当時、急速に発展する大阪市および周辺地域の都市基盤整備を進める上で、技術者の人材確保がいかに重要であったかという側面もよく伝えています。1925年に、大阪市は東京市(当時)を抜いて日本一の大都市になります。いわゆる「大大阪」の時代で、人口規模は世界第6位。ビルを建て、道路を広げ、都市機能を充実させることは喫緊の課題でした。フィールド・スペシャリストを育成するという当時の使命は、その後、100年近い時間の流れの中で少しも色褪せず、むしろ複雑な社会を生き抜くために一層重要な価値観として受け継がれ、常翔学園が現在設置する3大学、2中学校・高等学校の共通の「建学の精神」となっています。各設置学校の卒業生は、テクノロジーの枠に留まらず、様々な分野で「世のため、人のため、地域のために」活躍すべく、大志を抱いて社会に飛び立ちました。
 2022年に常翔学園は創立100周年を迎えます。100年間は1世紀として単位化される相当の重みをもつ期間です。この長い歴史の中で何があったのかを知ることは、まだ見ぬ未来を考える上で大いに参考になるでしょう。未来を確言できる人はいませんが、過去の事実を物語る何らかの物証があれば、その物証を手がかりにして未来を洞察することは有効であるように思われます。現在を支えているのは長い過去の歴史であり、現在が過去から連続していると考えるなら、未来を現在の延長線上に位置づけることにも意味を見出すことができるでしょう。ここで過去・現在・未来は繋がり、過去と未来を結ぶ何らかの座標上に原点として現在を置くことが可能になると思われます。原点のない座標では、未来を正しく見通すことはできないでしょう。過去を現在の後方に、未来を現在の前方に正しく位置づけることができてはじめて、真に新しいものが生まれるはずです。常翔歴史館は「未来を見ている」学園関係者および地域の皆様にとって、座標の原点としての位置にありたいと願います。
 常翔歴史館には設置各学校の歴史を物語る物証が残されています。「未来を見ている」学生・生徒がより確かな未来を見通せるように、常翔歴史館はその機能を果たしたいと考えています。一方、常翔歴史館が現在所蔵している物証としての史資料は、未来を見通すために十分な規模・数量であるとは必ずしもいえません。2022年に向けて、「未来を正しく見つめるために」、史資料の収集と展示の一層の充実を図っていきたいと考えています。

常翔歴史館館長
松浦 清
(大阪工業大学教授)

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