こう ちゅうきゅうアレルギー解明は終わりの見えない「メビウスの輪」多く引用された論文執筆者として学術誌からの表彰や「世界で最も影響力のある研究者トップ2%」にランクイン(図4)JAK阻害薬によりJAKが活性化しなくなると、ステロイドの効きにくさが抑えられる学生に実験の指導をする奈邉教授10August, 2025 | No.112 | FLOW 更に、2型自然リンパ球を上記の3種類のサイトカインで刺激すると、細胞の自然死(アポトーシス)を阻害するたんぱく質「Bcl−xL」が増えることも分かりました。JAKとともにBcl−xLの働きを抑えることが難治性ぜんそくの新たな治療法の可能性につながることが示唆され、現在も詳しく解析を進めています。将来的にはヒトの細胞でも試して、年月がかかっても創薬までつなげたいと思っています。 実験はトライアンドエラーの繰り返しです。これまでに見たことのない結果が一度出ただけで「大発見」とはなりません。新たな結果が出ても、「どこかに間違いが隠れていないか」などと疑いながら検証を重ねるうちに、徐々に新しい発見であることに気付いてきます。創薬には多くの研究者の努力の蓄積があります。私自身が共同研究者として関わり、市販されている薬には、抗ヒスタミン薬の「アレジオン」、ぜんそく薬の「オノン」、「セラトロダスト」などがあります。 奈邉教授は、日本薬学会発行の国際学術誌「Biological and Pharmaceutical Bulletin」で「2024 Highly Cited Review Award」を受賞しました = 写真は表彰状。同誌に掲載された総説論文(特定の分野やテーマについて先行研究をまとめて体系的に解説した論文)から、特に多く引用された著者に贈られます。対象となった論文は「Steroid-Resistant Asthma and Neutrophils(和訳:ステロイド抵抗性ぜんそくと好 中 球)」で、ぜんそくの新たな治療法開発に向けた重要な知見を提供しています。 また、米国のスタンフォード大とエルゼビア社が発表している世界のトップ2%の科学者を特定する包括的なリスト「標準化された引用指標に基づく科学者データベース」にも「生涯区分」で2023・2024年に連続してランクインしています。自分の研究が社会に役立っていることには、素直にうれしさを感じます。 細胞の働きに目を向けると、ある物質によって起きる体の反応は別の反応を引き起こし、更に異なる現象へとつながっていきます。子供のころ、白血球がバイキンを食べるという絵本を見て、体の中で起きていることに興味を持つようになりました。大学に進んでからは抗原抗体反応について研究して、パズルのピースのように決まった組み合わせで細胞に次々と変化が起きる現象に面白さを感じました。アレルギーを研究して35年余りになりますが、まだまだ未知の部分が多く、まるでメビウスの輪のように、いつまでたっても終わりが見えず、興味が尽きません。今回の NewWAVEで紹介した奈邉教授に関する論文は以下の通り。 「Involvement of Janus kinase-dependent Bcl-xL overexpression in steroid resistance of group 2 innate lymphoid cells in asthma(和訳:ぜんそく時に2型自然リンパ球にみられるステロイド抵抗性におけるヤヌスキナーゼ〈JAK〉依存性 Bcl-xL 過剰発現の関与)」Immunology 172,653-668(2024)DOI: 10.1111/imm.13805T O P I C S
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