常翔学園Flow112号
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う よJAK と STAT 中心に進める研究(図3)2型自然リンパ球が3種類のサイトカインの刺激を同時に受け、ステロイドが効きにくくなる研究室では学生たちが熱心に論文やレポートをまとめていた(図2)2型自然リンパ球と3種類のサイトカインを合わせて培養。サイトカインを1種類ずつ添加すると細胞数はあまり増えず、ステロイド(DEX)で効く。2種類や3種類を合わせると大きく増え、ステロイド(DEX)を加えても数を減らすことのできない(ステロイドの効かない)状態に変わる09 FLOW | No.112 | August, 2025 これまでの研究から、ステロイドの効かないぜんそくには、どんな薬を投与しても効果が出なかったのですが、JAK阻害薬を投与すると症状の改善がみられました。更に、ステロイドも併用すると、ステロイドの効かないぜんそくだったにもかかわらず、ステロイドも効くようになってきたのです。 個体(生体)レベルでの実験結果を受け、細胞レベルでもJAK阻害薬の働きを解き明かすことにしました。ステロイドの効かないマウスの肺から2型自然リンパ球を取り出して試験管内で実験を試みたのですが、取り出す過程で何らかの変化が起きるようで、体外ではステロイドの効く状態にしかなりませんでした。何度も試しましたが結果は変わらず、紆余曲折を経て試験管内で人工的に刺激を与えてステロイド耐性に変化させることにしました。2型自然リンパ球に、アレルギー反応を促進するきっかけとなるサイトカイン3種類(IL−7、TSLP、IL−33)を合わせて培養したところ、ステロイドの効かない状態に変化させることができました(図2)。 サイトカインは2型自然リンパ球の受容体にくっつくと体内でさまざまな変化が起きます。IL−7とTSLPがくっつくと、受容体の根本に結 合しているJAKが 活 性 化し、続 いてSTATも活 性 化するという「JAK−STATシグナル伝達経路」という反応が起きます。IL−33がその受容体にくっつくと、その他の酵素を活性化させます。3種のサイトカインを一気に2型自然リンパ球に合わせたことで、異なる細胞内シグナルが同時に起きて刺激が増強し、ステロイドの効かない状態に変化したと考えています(図3)。    今回の研究において一番難しかったのが、この2型自然リンパ球を細胞レベルでステロイドの効きにくい状態に作り出すことでした。実験を担当した大学院生と学部生が粘り強く取り組み、約1年かけて壁を破ってくれました。ステロイドの効きにくい2型自然リンパ球について、JAK阻害薬の効果を調べてみました。すると、JAK阻害薬でJAK−STATシグナル伝達経路を阻害すると、ステロイドの効きにくさが消失したのです(図4)。 ステロイドの効くぜんそくと効かないぜんそくについて、2型自然リンパ球の違いを調べてみました。すると、ステロイドの効かないぜんそくではヤヌスキナーゼ(JAK)という酵素の一種であるJAK3と、遺伝子発現を制御する物質のSTATの一種であるSTAT5aが明らかに増加していることが分かりました。JAKは最近のアトピー性皮膚炎の治療において注目されており、JAK阻害薬をステロイドの塗り薬と併用すると効果が上がることが分かっていました。また、新型コロナウイルス感染症の重症患者へのステロイド投与時にJAK阻害薬も追加すると、死亡率が低下したことも報告されています。しかし、これらの結果は、「単に2つの薬を使ったから効果が強くなっただけなのか」、あるいは「JAK阻害薬がステロイドの効果を増強させたのか」は、いまだに不明です。私たちは、難治性ぜんそくでは2型自然リンパ球のJAKとSTATがステロイドの効き目に関与していると仮定して、研究を進めることにしました。

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