常翔学園Flow111号
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河合研究室で鉗子ロボットの動きを確認する共同研究者の医師研究室に医師を招き特別講義や実験会を開催ロボットを大阪・関西万博で展示06May, 2025|No.111|FLOW 現場百回、枯れた技術も大切に手術助手ロボットの開発で難しいことは、医師の使う言葉を工学的な用語に変換することです。手術の教本はありますが、実際に症例を重ねて身につけた経験値による部分も多く、言葉で説明してもらっても「しっかり引っ張って術野を展開したい」など感覚的な表現で、数値に落とし込むのに苦労します。また、教本には執刀医の動きについては説明がありますが、助手の動きについては触れられていないことが多いので、現場を観察して学ぶことがほとんどです。学生には、「現場百回」と伝えています。緊張感を持って病院に身を置き、命と日々向き合っている外科医と言葉を交わし、体験することから考えてもらいたいのです。試作機が研究室では動いていても、病院に持ち込むと不具合が生じて調整に時間がかかることも珍しくありません。学生には「シンプルで分かりやすいものがベスト」で、最新技術ばかりでなく、古くから使われて安定さが裏付けられている「枯れた技術も大切」と教えています。手術に使うロボットの開発は、性能面だけを考えれば工学的な実験でも間に合います河合研究室では大学院生が共同研究している病院へ手術見学に行き、研究を進めています。新型コロナウイルス禍以前は、夏期休暇中に1カ月ほど病院へ滞在していました。現場で刺激を受けるため新たな発想が開発に生かされ、「こう来たか」と驚かされることを河合教授は楽しみにしています。また、研究室に定期的に医師を招いて特別講義や実験会も開いており、医療への理解を深め、学生たちが開発中のロボットへの評価を受けています。河合研究室が開発したロボットは、大阪工大が8月19日に大阪・関西万博で開催するイベントで紹介します(12ページに関連記事)。が、利用者である医師の意見に耳を傾ける経験を重ねていれば、将来エンジニアとして活躍する際に役立つ本当の力がつくと思います。現在開発している手術助手ロボットは腹腔外科と耳鼻科向けですが、他の診療科でも対応できるものを更に開発していきたいと思っています。医師の偏在や働き方改革、少子化など外科医を取り巻く状況が厳しくなっています。手術助手ロボットが増えることで、離島や山間部など、地方に住む患者さんでも自宅近くの病院で手術できるような将来が来てほしいと思います。どこに生まれてもどこに住んでいても医療が保障されるような社会へと、工学分野からの貢献を続けていきます。KAWAI Lab TOPIC河合研究室トピックス

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