ふ かんテーブルにごちそうが並ぶノエルのホームパーティー。奥中央の黒いジャケットが松尾准教授。手前に座る妻と双子の娘と共に招かれたおおらかに生きる国民気質を体感 俯瞰的な視点持つ大切さを伝えたい割り当てられるので、その時に合わせて試料の準備をしなければなりません。やり直しがきかないため、細心の注意が必要です。また、実験の測定データを見て、すぐに何かが分かるということはありません。理論に基づき、プログラミングを併用して、少しずつ読み解いていく必要があります。時間はかかりますが、まだ世界の誰も知らない結果が得られるので、難しくもここが一番面白いところです。 これまでの実験では、比較的安価で大量に入手できるモデルたんぱく質やリン脂質を使って、放射線を利用した実験に適した試料の取り扱いや解析のノウハウを蓄積することができました。今後は、これらのノウハウを生かして、アルツハイマー病などアミロイド線維が関係する疾患の原因たんぱく質を使って研究を進めていきたいと考えています。究極的には、患者組織から抽出したアミロイド線維やヒトの神経細胞膜を使った研究を展開し、重症化につながるアミロイド線維やリン脂質分子の特徴を原子レベルで解明したいと思っています。これらの研究により、アミロイド線維や脂質分子を構成する原子の運動の仕方を変えることで、毒性を和らしている時期でした。「日本からの最終便」の航空機でフランスに入国すると、1回目のロックダウン(厳しい罰則規定が伴う外出禁止)初日でした。 1日の新規感染者数が50万人を超えた日もあり、マシンガンを携帯した憲兵隊が街中を見張る物々しい雰囲気も体験しました。そんな中にあっても、「皆で集まらないノエル(クリスマス)はあり得ない」と家族や友人同士で例年通りパーティーを開き、松尾准教授も家族と共に招かれました。起きても『仕方がない』とおおらかに受け止める人が多く、私も人生観が大きく変わりました」と話していました。げるような薬剤分子の探索へと発展させる可能性があると考えています。 私は、本学の診療放射線学科の授業では、自分の研究分野に近いものについて最新の知見を紹介するなど、可能な限り新しい情報を学生に提供しています。大学で学ぶ内容は高校までのように全て確立されているものではなく、現在世界中で進められている研究によってダイナミックに変化し得るものだということも理解してもらえるように心掛けています。自然現象の原理を追究する研究は一般的に、すぐに私たちの生活に役立つ成果が得られるわけではありません。しかし、時間をかけて成果を蓄積することが新しい技術へとつながり、私たちの生活にも影響を与えるようになることから、どのような研究に対しても「何の役に立つのか」という短期的な実利を求めるのではなく、より俯瞰的な視点を持つことが大切だということも伝わるように努めています。診療放射線技師の国家試験に向けて研究室で勉強する学生を励ます松尾准教授コロナ禍におけるフランス滞在記松尾准教授がILLに留学した2020年3月は、新型コロナウイルスが世界的に感染拡大フランス暮らしを振り返り、松尾准教授は「実験であれ日常生活であれ、トラブルが12February, 2025|No.110|FLOW今回のNewWAVEで紹介した松尾准教授の研究に関する論文は以下の通り。・Matsuo et al., Front. Mol. Biosci. 8:812096 (2022). DOI: 10.3389/fmolb.2021.812096・Matsuo et al., Phys. Chem. Chem. Phys. 26:18943-18952 (2024). DOI: 10.1039/D4CP00965G
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