常翔学園FLOW109号
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大阪工大大学院 建築・都市デザイン工学専攻博士前期課程2年竹之内 美桜さん(たけのうち・みお) 今回万博の開幕に先立ち、万博のリングの見学をさせていただきました。実際にリングの下に立つと、集成材を利用した柱梁が整然と並ぶ様に、清水の舞台といった神社仏閣を彷彿(ほうふつ)とさせる神聖さも感じ、学生一同非常に興奮しました。学会などで中大規模建築への木材利用に関する注目度が非常に高い中、リングは一般の人々にも見えるカタチで木造建築への関心の向上につながると感じました。今回は大林組の担当工区の見学でしたが、工区によりユニットの仕様や工法が異なるため、万博開催後にリングの3工区の異なる取り組みに注目しつつまた訪れたいと思います。大阪工大 建築学科4年大野 慶二さん(おおの・けいじ) リングの下を歩くと大迫力の構造体でありながら木の温かさを感じられ、静けさと躍動感をまとった木架構の構成美に圧倒されました。また、工期を短縮させながら精緻に施工するための新たな貫接合の開発や大きく2つ(上層と下層)に分ける施工方法など、さまざまなアイデアが随所に取り入れられており、大学の講義だけでは学べないリアルな建設現場の先進性とそれを具現化する技術力の高さを体感できました。他のパビリオンなどは、完成までもう少し時間がかかりそうですが、リングの上からの眺めは万博の活気を容易に想像できるものであったため、開催までの期待が一層高まりました。November, 2024|No.109|FLOW大林組がパビリオンワールド(PW)北東工区で施工する各種施設=大林組提供屋上緑化などの工事が進められています。 見学当日はあいにくゲリラ豪雨に見舞われましたが、幅30mのリングの下は屋根部分が傘となり、集団が広がって歩いても濡れることはありませんでした。階下で柱の構造を見ているうちに小雨になり、スカイウォークに上がってリング全体の形状や建設の進むパビリオンを見渡しました。学生たちは柱を手で触れ、木の香りをかぎ、「木造でこんなに大きな建築物がこの短期間に施工できるのか」などと語り合い、木材の織り成す構成美を楽しんでいました。 見学後は現場近くの大林組ビジタールームで内林さんから建築工はり法について説明を受けました。大林組JVでは1万本を超える柱や梁の部材を使用。柱材は約50%を四国産のヒノキ、梁材は全て福島県産のスギを使い、福島県浪江町にある工場で集成材に加工するなど、国産材の活用促進や東日本大震災からの復興支援にこだわりました。 貫接合は伝統工法では木栓をくさびとしますが、大林組の施工方法では鋼板とボルトで現代版くさびを開発して、重さや地震動などによる変形に対応できる工夫がなされています。また、通常は現場で柱や梁を下から組み上げていきますが、今回は架橋ユニットを下層と上層に分けて施工。下層ユニットに上層ユニットをクレーンで吊り上げて組み上げる工法を取り、工期の短縮や高所での作業を減らして安全性を確保したことが説明されました。 内林さんは「リングをきっかけに、巨大な建築物に木造を取り入れることが今後のトレンドになると思う。多くの会社が力を合わせて造り上げられたことが喜び」と語っていました。「2025年 大阪・関西万博 大林組の取り組み」Special Website02「構成美に圧倒された」Voices「木造建築への関心高まる」

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