大山教授(右)から八幡工学実験場の設備について説明を受ける(左から)河村さんと辻脇さん「繰り返し載荷試験装置」では、負荷を繰り返しかけて安全性や耐久性を調べる。大山教授が手を置いているのは鋼とコンクリートを組み合わせた橋の試験体大山では、実験場の設備を見ながら説明しましょう。今日は3つの装置を紹介します。まずは「繰り返し載荷試験装置」です。試験体に対して例えば10トンの負荷を繰り返しかけることで、安定性や耐久性を調べることができます。 次に「自走式輪荷重移動載荷装置」です。大型車両や航空機のタイヤを取り付けた車輪を油圧モーターで繰り返し走行させ、道路での車の走行や滑走路での飛行機の着陸時を再現し、路面へのひび割れ発生状況を「自走式輪荷重移動載荷装置」では大型タイヤを繰り返し走行させ、路面へのひび割れ発生状況を調べているおおやま・おさむ1996年大阪工業大学工学部土木工学科(現:都市デザイン工学科)卒。2001年同大学院工学研究科土木工学専攻(現:建築・都市デザイン工学専攻)博士後期課程修了。片山ストラテック(現:日本ファブテック)橋梁設計部を経て、2005年大阪工業大学工学部都市デザイン工学科講師。2016年から現職。2020年から八幡工学実験場長・構造実験センター長も務める。博士(工学)。京都府出身。November, 2024|No.109|FLOW10調べています。関西国際空港の滑走路も、この装置での実験結果が生かされました。最後に「耐火実験棟」です。5分間で最高1200℃まで加熱可能な炉があります。例えば橋の下でタンクローリーの火災が起きると、1000℃を超える熱にさらされます。火災事故が起きた時のコンクリート内部や、先ほど説明したずれ止めの変化などを調べています。河村実験では、どういう結果が出たら良いと判断するのですか?大山例えば、自走式輪荷重移動載荷装置では、200万回動かして損傷しなければ実用化に向けて大丈夫という判断をします。■脇実験では何が大変ですか?大山荷重をかけるなどの実験ではなく、前段階の準備が最も大変です。わずかでも構造が傾いた状態で実験をすると、その傾いた側に力が集中して予期せぬ壊れ方をしてしまうからです。土木は巨大な構造物を造りますが、計画通りの強度や耐久性を維聞いて一言河村悠誠 かわむら・ゆうま(常翔学園高2年)「耐火実験棟」の炉では5分間で1200℃まで加熱できる持するには高い精度が求められます。例えば、明石海峡大橋の主塔の高さは300mありますが、傾きの誤差は3.0cmと、1万分の1の精度で架設されています。最近はコンピューターを使った解析技術も進んできましたが、実験しなければ分からないことも多くあります。実験場は十分な広さを確保しているので、実寸大のモデルを使って実験し、実際の条件に近いデータを得ることができます。このデータが社会のさまざまな土木技術に生かされ、市民の安全で便利な暮らしに貢献できていることに誇りを感じています。■脇優 つじわき・ゆう(常翔学園高2年)●毎日、通学に橋を利用しています。人や車がたくさん通っても安全を確保できるよう、さまざまな実験をしていることを初めて知りました。社会を支える土木工学という研究分野にも興味がわきました。●橋のモデルを使った実験では、構造の違いで強度が変わることに驚きました。土木や建築のための実験施設は珍しく、車輪を動かす設備や高温の炎が出る炉の迫力に圧倒され、貴重な体験ができました。
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