02August, 2024|No.108|FLOWメンバー14人は各地の「ごはんがおいしい」と評判の店を食べ歩きました。そして40歳だった宇都宮さんがたどり着いたのが大阪・堺の定食屋「銀シャリ屋 げこ亭」でした。「飯炊き仙人」と呼ばれて一見気難しそうな店主の故・村嶋孟さんと「ごはん談義」で意気投合した宇都宮さんは、炊飯中の釜の温度計測などを許されたのです。そのデータ解析から生まれたのが、ごはんの炊きムラを改善するために内釜をげこ亭の釜のように広く浅い形にし、昔の羽釜のように釜の周りにつばを付けるなどのアイデア。試行錯誤を重ねて2010年9月に発売された「極め羽釜」シリーズはおいしさが評判となり7年間にわたりヒットしました。「村嶋さんから『うまい!』のお墨付きをもらったのが何よりうれしかったです」と振り返ります。おいしいごはんの追求これからも現在人気の「炎舞炊き」シリーズは宇都宮さんの開発人生における1つの到達点です。浅い内釜では1升(1.8ℓ)炊きのサイズは本体が大きくなりすぎるため発売することができませんでしたが、その課題解決にチャレンジしたのです。ここでもそれまでの考え方を一新。かまど炊きの炎の揺らぎを再現することを目指し、業界初構造の本体底部に1200ワットのIHコイルを3つ(現在は6つ)搭載。3つのコイルを順にオン・オフすることで高火力と、上下ムラをなくす対流を実現しました。「それだけでなく、釜に熱効率の良い鉄を組み込み、高火力につきものの吹きこぼれ対策も施した特許満載の製品です」。おいしいごはんを追い求め、たどりついた自信作です。究極の炊飯ジャーへの宇都宮さんの追求は、これからも続きます。そんな宇都宮さんだからこそ後輩たちには「継続は力なり」という言葉を贈ります。「私が継続できたのは、興味や好奇心を持ち続けたからです。また仕事は1人ではできないので仲間への感謝を忘れないでください」。31年間の実感がこもります。えんぶうつのみや・さだむ ●1993年大阪工業大学工学部電子工学科(現:電子情報システム工学科)卒。同年象印マホービンに技術職として入社し、電子チームやフローチームを歴任したが担当は炊飯ジャー開発一筋。2018年第一事業部副部長。2022年から現職。大阪府出身。
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