常翔学園FLOW108号
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12えきてき液滴※の表面を微粒子が覆った状態、またはその物体を「リキッドマーブル」と言います(図1)。液体を保った状態でありながら固体のように扱うことができるので、硬いものの表面をコロコロと転がしたり、水面の上に乗せたりできます。 私がリキッドマーブルの研究を始めたのは、大阪工大に講師として赴任して3年目の2008年ごろです。元々はエマルション(乳化)という油滴が水の中に分散する、あるいは水滴が油の中に分散した状態に関する研究をしていました。本来は分離する水と油ですが、微粒子を界面活性剤として利用することで混ざった状態にすることができます。水滴や油滴を覆う界面活性剤として働く微粒子について研究する中、液滴を微粒子で覆うと空気中でも安定させられるというリキッドマーブルの論文を見つけました。この研究は物理分野で進んでいたので、化学分野の私なら、さまざまな大きさや材質のリキッドマーブルを生み出し、世界で注目される研究につながるのではないかと考えました。 リキッドマーブルを覆う微粒子として、シリカやポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンなどを使います。これらの粒の大きさは数十ナノメートルからマイクロメートルサイズとばらつきがあり、形も不ぞろいです(1mmの100万分の1がナノメートル、1000分1がマイクロメートル)。リキッドマーブルを作るには、シャーレに微粒子を敷き詰め、そこにピペットなどで液滴を落とし、滴を転がして表面に微粒子を付着させます。さまざまな素材を用いて作製する中、粒子の形状やサイズがリキッドマーブルの形状や構造にどのように関係するかを解明する必要性を感じました。そこで、ポリエチレンテレフタレートの六角形プレート(対角の長さ約0.2〜2mm、厚み40〜50マイクロメートル)を使い、異なる大きさのリキッドマーブルを作製して形状や構造にどのような影響があるかを探りました。 その結果、プレートの大きさに比べて大きな滴でリキッドマーブルを作ると、球形や扁球形になり、表面を観察するとプレートが規則正しく並ぶハニカム構造を形成していました。一方、プレートと滴の大きさが1:1に近い場合では、シャープな角を持った六面体(図1)リキッドマーブルの模式図液滴大気※液滴=液には水や水溶液、粒子の混濁液、油、イオン性液体など多様な素材を用いている微粒子へんきゅう取材時に藤井教授の研究室で作製したリキッドマーブルAugust, 2024|No.108|FLOW六角形プレートを使い形状や構造への影響探る

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