図1 立ち上がりの動作解析(協力:古田誠朗)東広島キャンパスのアクティブ・ウェルネス・センターにあるスポーツ動作解析生理学実習室。上部に複数の赤外線カメラが見える。塩川教授の足元には、力の反作用を計測できるフォースプレートが埋め込まれている図2 中学生のバッティングフォーム(共同研究:野球解説者 野村謙二郎、協力:岡修司)データに高い関心を持つ子供07FLOW|No.107|May, 2024 光学式モーションキャプチャとフォースプレートを組み合わせてデータを取ると、動きの仕組みを可視化することができます。データを筋骨格モデルに当てはめれば、筋活動量の予測や関節周りにかかる力を予測できます(図1)。 筋力の発揮を調べるには、活動電位を記録する「筋電位(EMG)」を計測します。身体の動きは、中枢神経から指令を受けた筋肉が収縮することにより生じます。筋肉が収縮する時に発生する活動電位を記録することで、どの筋肉がどの程度の大きさで活動したかを知ることができます。 これらの機器を利用して、学生向けに講義前の予習として見る映像や、小中学校や高校の児童・生徒向けの教材を作ることに力を入れています。中学校の部活動やクラブチームから協力を依頼され、2022年からU-14の選手のジャンプ力と筋力を測定しています。「思ったようにジャンプできない」と悩んでいる子供がいたら、平均値を参考に本人の将来の数値をシミュレーションします。「今はできなくても、身長が〇cm伸びたら、ジャンプ力はこれだけ増えるよ」と具体的な数値を示すと、頑張る気持ちを引き出すことができます。小学校中学年から中学校中頃までの年代は「ゴールデンエイジ」といって、人生の中で最も運動能力が伸びる時期だとされています。データを活用した働きかけをすれば、効果的に体力を向上させることができます。中学野球の選手向けには、バッティングの動作解析をしています。バットのスイングを複数台の赤外線カメラで撮影し、軌跡を表示します。三次元化されたマーカーの位置座標より、上肢の動きや腰のひねりを算出します(図2)。データを渡す時には、個々のフォームやボールをとらえるタイミングなど、注意するポイントをかみくだいてフィードバックしています。 交流のある高校野球チームには、野球のピッチングやバッティングに関するバイオメカニクスの論文を渡しました。「文章の内容は難しいから読まなくてもいい。写真や図を見て、練習のヒントにしてごらん」と投げかけると、必死に文章も読み解こうとして、次に会った時には質問を受けました。 高速で撮影した映像からボールの速度や回転軸を分析したり、バットにセンサーを取り付けてスピードや角度を計測したり、データを分析する機器が一般にも市販されるようになってきたこともあり、子供らもデータに関心が高くなっていると感じます。
元のページ ../index.html#9