全卒業生との思い出が私の宝物ですが、特に印象に残っているのは最後に卒業生を持ったクラスです。40歳から進路指導部長を12年間担当し、もう担任はできないと思っていましたが、高2の担任に休職者が出て引き継ぎました。久し振りの担任で、頑張り過ぎて、最初は空回りしていましたが、3年になる頃には皆がついてきてくれました。撮りためたスナップで30分ほどの映像を作り、卒業式後に教室で流した時には涙が止まりませんでした。校 長田代 浩和自律的学習者を育てる教育先進校に向けミドルリーダー教員を育成03FLOW|No.107|May, 2024■1期目を振り返っていかがでしたか やろうとしていたことは、ほぼすべてできた2年間でした。就任1年目は学園創立100周年の節目だったので、目指す将来像を「誰もが入学を望む地域有数の進学校」から「グローバルシチズンシップを身につけた自律的学習者を育成する教育先進校」に変えました。教員にも「学習し、進化する教師集団になってもらいたい」と研修制度を整えたところ、多くの教員が学外の研究会やワークショップに参加するなど、前向きにチャレンジしてくれています。働き方改革の観点から、職員会議の時間を短縮して、部活動の顧問も希望制にしました。■今後取り組みたいことを教えてください 教育改革をする中で、いくら新しいことをやろうとしても教員のマインドが古いままでは効果がないことに気づきました。新しい風を入れるには、ポジティブなマインドセット(思考パターン)を持つ必要があります。そこで、今年度の校長方針として「誰もが安心してチャレンジできる学校づくり」を掲げました。トップダウンではなく自律型組織を目指すため、ミドルリーダー教員を積極的に育てていきたいと思っています。また、専門的リーダー教員として、教科ごとの指導法、探究学習・キャリア教育、海外大学進学、カリキュラムマネジメントなどのテーマを設定して希望者を募り、それぞれ研究してもらいます。更に、生徒の主体性を育てるため、従来の生徒指導から生徒支援へと教員の意識を変えています。校則の変更や入学式、卒業式、オリエンテーションなどの企画を生徒と教員がプロジェクトを組んで進めていきます。 校内にさまざまなコミュニケーションも増やしたいと思っています。生徒が校長室を自由に訪ねることのできる「OPEN DAY」を設定し、保護者向けに校長主催のオンラインセミナーを開催します。教員向けにはカフェスペースを作ることを検討しています。交流からワークショップが誕生したり、精神的な支援につながったりすることを期待しています。 コロナ禍が落ち着き、グローバル教育を再開することができました。高校の修学旅行の行き先が海外に戻り、今後は目的志向の探究型修学旅行に変えていきます。現在、海外の姉妹校はオーストラリア、韓国、中国、台湾にある計5校です。新たに、アメリカ・ハワイの高校との連携も話が進んでおり、アジアも充実させていきます。姉妹校交流を通して、生涯の宝物となる、かけがえのない体験をしてもらいたいと願っています。また、従来から進めている本校の科学的探究「ガリレオプラン」を海外の学校と連携して実施し、合同で研究・発表することからグローバル時代に必要な英語によるコミュニケーション能力を身につけた科学技術人材の育成にもつなげていきたいと思っています。■好調な生徒募集が続いています今春の大学合格実績は国公立大85人(うち既卒7人)、関関同立462人(同32人)でした。卒業生が毎年すばらしい結果を出してくれるおかげで、生徒募集は好調です。勉強だけでなく、企業探究学習やキャリア教育の充実、活発な部活動などもあり、学園創立100周年記念ソングの「常翔ライダー」の歌詞にもある常翔(上昇)気流に乗る勢いが魅力になっているのだと思います。常翔学園中学校・高等学校たしろ・ひろかず ■1985年同志社大学文学部英文学科卒。86年大阪工大高(現・常翔学園高)英語科教諭に。進路指導部長、教頭などを歴任し、2022年4月から現職。校長2期目。学園理事。趣味は週2回のジムでの筋トレと、韓国や日本のドラマ鑑賞。好きな作家は村上春樹と北村薫。クラスの一体感を象徴する写真(中央グレーのTシャツが本人)=2012年5月特集学園2中高の校長再任教員人生における思い出
元のページ ../index.html#5