常翔学園FLOW107号
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May, 2024 | No.107 | FLOWい か がわアイデアや下書きを書くノートの実物について尋ねると、ためらいつつも現物を見せてくれた東川さん(右)。方眼用紙の紙面には、小さな文字が丁寧に記されていたのパソコンで清書しています。●岡田 『放課後はミステリーとともに』(実業之日本社)の主人公「霧ヶ峰涼」など、登場人物の名前が特徴的です。どのように思いつきますか?■東川 エアコンのポスターを見ていて、「『霧ヶ峰』ってかっこいい名前だな」と感じて使いました。(架空の)烏賊川市を舞台にしたシリーズに登場する私立探偵の鵜飼杜夫と助手の戸村流平は、競馬新聞に載っていた調教助手の名前をヒントにしました。インタビューを終えて●岡田さん東川先生がアイデアを書く「ネタ帳」には、細かい字がびっしり並んでいました。下書き段階でここまで書くのだと驚き、貴重なものを見せてもらったことに感動しました。『■解きはディナーのあとで』(小学館) 毒舌執事と令嬢刑事の軽妙な掛け合いが魅力のミステリー作品。主人公の宝生(ほうしょう)麗子は国立署の新米刑事ながら世界的に有名な「宝生グループ」のお嬢様で、仕事を終えると大豪邸に戻り、ドレスに着替えて優雅な夕食を楽しむ。難解な事件にぶち当たった時、頼りになるのが執事の影山。相談すると、暴言すれすれの言葉を吐きつつも、見事に■を解明してくれる。続編に2、3巻、『新 ■解きはディナーのあとで』があり、シリーズ累計で436万部を記録している。●■野さん小説を書く過程や、学生の頃の話までたくさん聞くことができました。忙しい執筆の合間をぬってインタビューに応じてもらい、東川先生に感謝の気持ちでいっぱいです。◆ 著書紹介 ◆12ひがしがわ・とくや 1968年、広島県尾道市生まれ。2002年、『密室の■貸します』がカッパ・ノベルズの新人発掘プロジェクト「KAPPA-ONE」第1期に選ばれ、プロデビュー。11年『■解きはディナーのあとで』で本屋大賞受賞、同年ベストセラー第1位。その他の作品に、『館島』(東京創元社)『博士はオカルトを信じない』(ポプラ社)など多数。実写化は照れくさい●■野 『■解きはディナーのあとで』(小学館)など、テレビや映画で実写化されたものはどんな気持ちで見ていますか?■東川 実は、ほとんど見ていません。自分の考えた登場人物が体を持ち、声を発するのを見るのは照れくさいからです。唯一、ちゃんと見たのが完成試写会に招待された『■解き』の劇場版です。原作にはないストーリーだったので、別の作品として受け止めました。●■野 ミステリーのネタは今どのくらいありますか?■東川 (笑いながら)ないです。デビュー直後はアマ時代の落選作を改稿することでストックのように使えましたが、『■解き』がヒットして、仕事の依頼が増えた時に使い切りました。ミステリーのパターンは無限にあるわけではないので、どうしようって思っています(笑)。●■野 作品を書く上で大事にしていることは?■東川 分かりやすい文章を書くことです。■は難解になるように考えますが、込み入ったシチュエーションを分かりやすく書きたいと思っています。必要な情報を的確なタイミングで示して、1つのストーリーとしてつながりのある会話や説明になるように書いているつもりです。●■野 書いていて、くじけそうになることはありますか?■東川 トリックに矛盾が見つかり、筆が止まることはあります。その時は、新たな登場人物を出したり、違う手掛かりを考えたりします。●岡田 あきらめたりしないのですね?■東川 一応最後まで書きます。雑誌に掲載したものの、気に入らないため書籍化しなかった作品は3つくらいあります。●■野 自作で最も好きな作品を教えてください。■東川 うーん……、『もう誘拐なんてしない』(文藝春秋)かな。2008年の出版ですが、今年1月に新装版を出すにあたり読み返したら、「面白いな」と感じました。子供の頃に住んでいた下関を舞台にした作品です。本格ミステリーというよりサスペンス。トリックも盛り込んでいて、喜劇の要素もあります。『謎解き』超えるヒット作を●岡田 今後の夢や目標について聞かせてください。■東川 デビューした時の目標がヒット作を出すことでした。『■解き』でかなえることはできましたが、そろそろ「『■解き』でおなじみの」と紹介されることから脱却したいなと思っています。新たなヒット作を出したいですね。

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