常翔学園FLOW107号
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10×す11FLOW | No.107 | May, 2024ミステリー作家東川 篤哉 さんひがしがわ ・とくや大阪工業大学 情報メディア学科2年おかだ・まい大阪工業大学 情報メディア学科2年くずの・あおい東川さん(中央)を挟んで岡田さん(右)と■野さん=写真はいずれも大阪工大図書館大宮本館●■野 作品を書き上げるには、どれくらいの時間が掛かりますか?■東川 原稿用紙70〜80枚の短編で2週間前後です。ただし、書く前に構想を練る時間が必要です。3、4日で固まることもありますが、1カ月たってもまとまらないこともあります。●■野 どこで執筆していますか?■東川 喫茶店で構想を考えたり、ノートに下書きしたりして、自宅 常翔学園の設置学校に在籍する学生、生徒、教職員が各界の一流人と語り合う「クロストーク」。第10回のゲストは、本格ミステリーをユーモアあふれるタッチでつづる作家の東川篤哉さんです。淀川に臨む大阪工大の図書館大宮本館を会場に、図書の選書や書架整理などに携わる学生ボランティア「ライブラリーサポーター」を務める岡田舞さんと■野葵生さんが、ミステリーを執筆する過程や作品に込める思いを聞きました。●岡田 大阪工大には3つのキャンパスがあり、それぞれ図書館があります。ここは昨年7月、新たに完成した大宮本館です。■東川 窓が大きくて眺めの良いすてきな図書館ですね。●岡田 今日は東川先生にたっぷりお話を聞きたいと、たくさん質問を考えてきました。まずは、ミステリー作品と出会ったのはいつですか? ■東川 小学4年の時、同級生に「図書館に面白い本がある」と教えてもらいました。最初に読んだのがエラリー・クイーンの『靴に棲む老婆』で、子供向けに書き直した作品です。●岡田 子供の頃から自分でも小説を書いてみたいと思いましたか?■東川 高校生くらいで書きたい気持ちが芽生えました。大学生になって原稿用紙に向かったのですが、字がうまくないので傑作と感じられず、挫折しました。映画に夢中になった学生時代●岡田 どんな大学生でしたか?■東川 岡山大学法学部に進学しました。当時は勉強より映画に夢中で、ジャンルを問わずに映画館やテレビで片っ端から見ていました。この頃の経験がホームシアターをトリックに使ったデビュー作『密室の■貸します』(光文社)につながっています。●岡田 デビューまでの過程は?■東川 大学卒業後は会社員として4年働きました。その後、昼はアルバイト、夜はアマチュア作家としてミステリーを執筆する生活が8年続きました。雑誌に投稿すると、入選したり、落選したり。「本当にプロとしてデビューできるだろうか」と不安でつらい時期でした。●■野 これまでの人生は作品に影響していますか?■東川 住んできた土地を舞台にするなど、いろいろな影響があります。父が海上保安部に勤めていたので、子供時代は転勤の連続でした。広島の尾道で生まれ、佐賀の呼子、長崎の佐世保、山口の下関を経て、高校は鹿児島で過ごしました。●■野 執筆はどのように進めますか?■東川 まず、中心になるトリックを考えます。そのアイデアを生かすため、どのような登場人物や舞台設定がいるのか、探偵役はどうするか、どこから語り始めるかなどを考えます。いつもノートを持ち歩き、アイデアをメモしています。●岡田 トリックをボツにすることはありますか?■東川 新たな作品を書くたびに、過去に思いついたトリックを見返して、どんな展開ができるかを再考します。作品に取り込むまで10年かかることもあるので、ボツにするというよりもストックしておくという感じです。ユーモアあふれる本格ミステリー緻密な■の解明はよどみない文体で岡田 舞 さん■野 葵生 さん

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