図3 VRによる動作フィードバック(共同研究:長崎大学 田中良幸、名古屋大学 青山忠義)ダンスの動きを360度から可視化客観的データ生かしたスポーツ指導を08May, 2024|No.107|FLOW ダンスを学ぶことのできる教材も開発しました。身体にセンサーを付けた教員に踊ってもらい、身体の動きを三次元の位置座標に変換しました。データでCGモデルを作成後、アニメーションのキャラクターを当てはめます。3D画像になっているので、360度あらゆる方向に動かして、前や横、後方からの振りを確認することができます。画面中央に教員、右側にアニメーションが並び、左側に空きスペースを作っています(写真2)。パソコンのカメラ機能を使って自分を写すと、左側に並んで映り、動きを比較できます。 ダンス映像は、中学校から依頼を受けたダンスの専門教員と、体育祭の練習用も作成しました。一人の先生が30〜40人の生徒に指導するのは難しくても、映像なら生徒が自分の覚えたい部分や向きを集中的に見て学習することもできます。 この他、動きの解析をトレーニングに生かした例もあります。野球の投球フォームとバドミントンのスマッシュをハイスピードカメラで比較すると、ボールのリリースとラケットでシャトルを打つタイミングが共通であることが分かります。バドミントンではひじを大きく上げてラケットを構えることから、体幹を使った大きくひねりのある投球フォームの習得につながります。 また、共同研究で身体運動能力を視覚化する技術も開発しました。VRゴーグルを付けた被験者にやり投げと砲丸投げの動作を取ってもらったところ、腕の可動域が広く、大きな楕円を描ける人ほど投げ出す力を大きく出せることが分かりました(図3)。 バイオメカニクスに用いるような本格的な機器がなくても、子供のスポーツ指導には映像やデータをもっと活用してもらいたいと思っています。小学校では毎年、体力測定をしています。その年の記録だけを子供に知らせるのではなく、過去のデータと一緒に渡すと、成長による伸びを意識して、「もっとうまくなりたい」という気持ちが芽生えるのではないでしょうか。 球技の試合をする時も、コート全体が映るように斜め上から撮影するのも一つの方法です。試合後に子供に見せて振り返らせれば、子供自身がポジションの善しあしに気付くきっかけにもなります。私はスポーツを対象にしたバイオメカニクスに取り組んでいますが、身体の動きの解明はスポーツ以外にも応用できます。介護分野とも親和性が高く、今後、さまざまなアプローチができると期待しています。また、硬式野球部の顧問も務めています。同部は、昨年度から広島六大学野球連盟に所属するようになったので、選手の強化にスポーツバイオメカニクスの手法も取り入れられたらと思っています。写真2:ダンスの練習用映像。画面の左側の空いたスペースにパソコンのカメラ を通じて自分の姿を映すことができるだ えん
元のページ ../index.html#10